女の本屋

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『沖縄を聞く』新城郁夫

2011.01.02 Sun

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.『沖縄を聞く』の見本が出来上がり、さっそく沖縄の著者のもとへとお送りしたときのこと。ところが3日たち、4日たっても本は届きません。これはおかしい……宅急便のホームページをあたり、遅延の理由がわかりました。それは、「沖縄・日米共同軍事演習のため」。

思わぬ理由に衝撃を受けました。過去最大規模の日米共同演習のため、沖縄行きのあらゆる貨物が滞っていたのです。航空機が上空待機に備えて燃料を積み増ししたぶん、貨物を減らさざるを得なかったと知りました。軍事同盟がこんなに直接的に生活に影響を及ぼすとは、ひどい話です。

日常生活の隅々に軍事的なるものが浸透する沖縄。そこで生きるとはどのようなことなのか。どうすればいいのか。

本書は「沖縄問題」という枠組みに疑問を呈します。基地と振興策のセットを「沖縄問題」と呼ぶことは、それが「沖縄の」問題というに等しいのではないか。「沖縄問題」とは沖縄を聞くことを拒絶し、沖縄の声を封印する、危機管理的な認識の枠組みではないだろうか。本書はそう問いかけます。

「沖縄問題」を自明化する思考の枠組みを外したのちに現れるのは、多元的な問いかけです。<沖縄はそれを聞くものの身体のなかに現れる終わりのない問いなのであり、この問いは、それを聞きとる者を内から規定しているあらゆる政治的、社会的、性的な制度の矛盾と亀裂を浮かびあがらせないではおかない。>(本書より)

「どのようにして自分の内側の沖縄ノートに、完結の手立てがあろう?」と若き大江健三郎は呟きました(『沖縄ノート』岩波新書)。本書で論じられる大江健三郎、目取真俊らの思索との響き合いの中に、沖縄という問いが出現してきます。いや、沖縄という問いはすでに私たちのもとに届いているのです。植民地主義の暴力をジェンダー/セクシュアリティとの深い連動の中に問い直し、戦後体制の亀裂から湧き上がる声を鮮やかに開示する本書の、沖縄という問いかけへの招待を受け取っていただけたらさいわいです。(みすず書房編集部・鈴木英果)








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