2013.01.12 Sat
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2013年1月11日から震災に関わる様々な人のインタビューを、11日ごとに更新して3月11日までアップするシリーズv-wanインタビューがはじまります。 第一弾は福井県敦賀市で脱原発を掲げて当選された今大地はるみさんです。大飯原発再稼働直後にインタビューに答えていただきました。 今大地さんのインタビューを担当されたのは、wanビデオ班voiceswanのやうちことえさん。インタビューとあわせて取材記をお読みください。
*今大地さんインタビュー動画は下記でご覧ください*
http://wan.or.jp/topic/?p=340
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今大地はるみさんに、インタビューをしてから、今日でまる一ヶ月が経つ。あれから、毎週金曜日の、首相官邸前のデモの膨れ上がり、友人たちとの何とはなしの会話の中で、「金曜日のあれ、行った?」なんて言葉もチラホラ出てくる。SNS上では、予想外の友人が、画像をアップしていたり。でも、何故か私は、行けずにいた。仕事の終わる時間も理由の一つだけど、もっと、何か気持ちをストップさせるものがあった。
この一ヶ月の間、何度も頭の中で、今大地さんの話が、再生されている。はじめてのインタビューで、何もかもがたどたどしく、思い出すと恥ずかしくなる。でも、私があのインタビューを思い出す必要があったのは、その言葉一つ一つを捉えきれていない不安があったからだと思う。あの時の話を、今大地さんの佇まいや、人となりとも合わせて、じっくりと咀嚼していくのには、時間がかかる。初めてのインタビューだったし、今大地さんの話は、本当に感慨深く、聞けて良かったという満足に浸ってしまいそうになった。しかも、脱原発運動は続けなきゃ!というモチベーションだけあがって終わりかねなかった。だから、あえて、首相官邸前の群衆に混じることを、よしてみた。そして、もう一度、この東京で再稼働
反対と脱原発を叫ぶことを、一人になって、考えてみることにした。
6月25日の夕方ごろ、敦賀駅で迎えて下さった今大地さんは、私に、原発マネーで建った建物を見せてくれた。駅舎自体も、間もなく原発マネーで生まれ変わる。このお金が注がれているのは、建物だけではなくて、その中で働く人たちにも、人件費もそうだ。原発関係で働く人たちの利用を見込んで、ホテルもいくつも建っている。人と人のあいだに、人々の生活の中に、流れている。それは、原発を選択せざるを得ない流れを作り出し、この町の人たちの声を、そして、考える力を静かにさらっていった。そして、沈黙が、震災後もどっかりとこの町に腰を下ろしていた。
でも、沈黙していたのは、考える力を失っていたのは、敦賀の人たちだけではない。私のいる東京もそうだ。去年の秋、新宿での脱原発デモの先頭にいて、鳴り物の音は聞こえるのに、人々の声が、全然聞こえないことに気がついて、ギクリとした。周りを見てみると、打楽器を鳴らしながら、口は閉ざしたままの人が多かった。声を出すというのは、それほどに、容易いことではないのだと実感した瞬間だった。デモの中にいるのに、町の7割が原発関係者なんてことはないのに、原発関係者のためのご飯屋さんで働いているわけではないのに、家族が例のハコモノで福祉サービスを受けているわけではないのに。でも、その声は、振り絞って出したもの。首相官邸前に、代々木公園に、あれだけの人が集まるのに、あの事故に加えて、さらに「再稼動」という危機が必要だった。それなのに、どうしてこの街から、原発立地地域では反対の声が少ないと、責めてしまう?
ひと塊に見える群れの中には、色々な立場の人たちや、主張やらがある。この雑多っぷりが、今の脱原発運動のモーターにもなっている。だから、私も今、こうして書いたり、話したりも出来るのかなと思う。でも、時々、違和感を覚えるのは、脱原発のシュプレヒコールが、気がつくと、お決まりの要求にすり替えられている時だったり、原発いらないの理由が、病気や障がいを持った子どもはいらないになってしまっている時だったりする。福島の町を、逃げるように去っていく、さっきまで脱原発を叫んでいた人たちの姿を見たときも。あれ、脱原発って何だっけ?
脱原発が、終着地点じゃないんだよねって言ったのは、私じゃない人。原発立地地域で生きる人たちの思いに寄り添った脱原発運動を続けて、これは、今大地さんからの警告。このところ、この「寄り添う」という言葉を、繰り返し、口の中で、つぶやいてみていた。この言葉の、芯の部分にもっと近づいてみたくて。 第四期目の当選を果たした今大地はるみさん。おでん屋の女将さんから、市議になった。スーツなんかは着ない、素敵な普段着のまま。そして、今までに一度も、議員バッチをつけたことはない。人間が生きいくこととはどういうことなのかについて、思考を止めることなく、敦賀市のあの土の上に立ち続け、そこから言葉をつむぐ方だった。 (2012年8月)
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