国土交通省の自治体職員を対象としたまちづくりに関する研修会の講師25人全員が男性だったため、ネット上で批判が起きている、と朝日新聞が報じています。(7月22日夕刊)
唖然とします。まちづくりがテーマということは、いまの「まち」がどうなっているのか現状を把握し、どういう「まち」なら住みやすいかという望ましい方向を考えていくことになると思うのです。つまり、そこに住む人々の暮らしがどうなっているのか、どうなればいいのかを考えるはずです。
その研修会の講師に女性が一人もいない!!
国交省の説明では、最初は女性の講師が1人内定していたが、直前になって日程が合わなくなり、男性だけになったのだそうです。それだって、25人のうち女性を1人入れとけば面目が立つ、ぐらいの浅はかな考えで準備しているから、その1人が都合がつかなくなるとゼロになってしまうわけです。
「まち」で暮らす人の半分以上は女性です。「まち」で暮らす子供や年寄りの世話をするのも大部分は女性です。「まち」のことは女性がいちばんわかっています。どういう「まち」が住みやすいか、どういう「まちづくり」をすればいいのかを知っています。
男性の講師たちは、科学的データとか、サンプルになりそうな世界の「まち」の資料だとか、いろんな情報を駆使して立派なアドバイスをするかもしれません。でもそれよりも、「まちづくり」に関しては、「まち」に住んで、日々暮らしている女性たちの方がエキスパートです。どういうところに不具合があるか、どこをつつけばその不具合が取り除けるか、わかっています。そういう人を講師として呼んで自治体職員の研修をした方が、はるかに現実に即した「まちづくり」研修になるはずです。ですから25人の講師を呼ぶなら、その半数以上は女性であってしかるべきです。
もうひとつ、7月23日付の毎日新聞にはひどい写真が載っていました。昨年の東京五輪から1年たって、コロナ禍の惨憺たる五輪を忘れたように、レガシーとか言い出しています。その五輪をきっかけにして、東京を拠点とするスポーツチームや団体が「TOKYO UNITE(ユナイト)」というプロジェクトを発足させたそうです。その発足の記者会見の写真です。数えると14人が写っていますが、女性は小池都知事だけ、後はダークスーツの男性がずらりと並んでいます。UNITEという以上、違う分野の人々や、考え方の違う団体など、いろいろな人や団体が結びついて何かをしようということだと思うのですが、どうもそうでもなさそうです。女性のいない男性だけの「UNITE」で、何をやるのというのでしょうか。都知事も関係しているような半ば公的なプロジェクトが発足するというのに、女性の顔が見当たらないというのはどういうことでしょうか。
公的な部門にいろいろな審議会や委員会、検討会などが設置されています。そうした会合のニュースを見ると、ぐるりと囲まれたテーブルに20人ぐらいの委員がいる、その中に女性が2人か3人ちらほらと見える、というのが一般的です。やっと1人見つけてほっとするときもあります。4、5人いたら立派な方です。たいていは「ちらほら」の程度です。「女性も入れてやったぞ」というアピールのための女性参加のような構図です。
安倍政権の目玉政策のひとつが「女性活躍」でした。 2014年、安倍首相は所信表明演説で「女性が輝く社会」にすると断言しました。それから8年たちました。コロナ禍で、散々ひどい目に遭っているのが女性です。テレワークが増えると女性の家事時間が増える、サービス業などで失業者が増えると派遣労働者が圧倒的に多い女性の失業者が増える、結局、コロナ不況は女性不況とも言われています。女性は輝きたくても輝けません。審議会や委員会で活躍したくても、そのメンバーにも選ばれないから活躍できません。
岸田首相は、安倍さんの遺志を継ぐと盛んに言っています。だったら、安倍さんが実現できなかった「女性活躍」と「女性が輝く社会」を実現してください。せめて政府や自治体の委員会や審議会のメンバーの女性の比率を高めてください。女性比率をクオーター制と同じく40%以上にしてください。
こういうことを言うと、選びたくてもその分野の専門知識を持つ女性がいないから仕方がない、との反論がすぐ返ってきます。それに対しては、そういう人材を育ててこなかった国が悪いのだと答えましょう。男性の場合は知識や技術が足りなくても、周囲が育てあげ、少し背伸びをしながらも成長していきます。女性はそういう機会に恵まれなかっただけです。だから少し未熟で、おぼつかなそうに見えても、その任を与えられれば背伸びしながらでも育っていきます。まずチャンスを与えてください。
公的な機関の委員会や審議会、検討会や研修会、そうした場で女性が輝き、活躍できるようにしてください。これが実現できて初めて、安倍さんの遺志を受け継ぐことになるのです。
2022.08.01 Mon
カテゴリー:連続エッセイ / やはり気になることば