「マニラで手術を受ける」と外科医バレンシア先生に伝えたら、手術の前に以下の4ステップをクリアしなければいけない、と説明された。

1,CTスキャン検査で、ガンの大きさと転移状況のチェック
2,各種の血液検査&循環器系検査で、全身麻酔の手術に耐えうる健康状況かをチェック
3,循環器専門医から、クリアランス(全身麻酔の手術許可)を得る
4,入院72時間前PCR検査のコロナ陰性の結果が出て、初めて入院&手術が可能

日本の病院なら、手術前の一連の検査は手術を行う病院でワンストップで手配してくれるのだろうが、フィリピンは違う。
フィリピンでは、医者は病院に所属しているのではなく、いわば自営業者で、病院は医者にクリニックの場所を貸すテナント業のような存在だ。
フィリピンで医者に「この検査を受けてください」と言われたら、自分で病院に電話をかけるか、オンライン予約するか、直接出向くなりして、検査の手配を自分でしなければならない。

乳がんの検査を受けたマニラの日系クリニックには、日本人アシスタントの方がいて、
そのクリニック内でできる検査の場合、その方が手配してくれた。
だが、今回受けなければいけない検査の中には、その日系クリニックでできない検査も複数あり、
他の総合病院で検査の予約手配を自分でしなければならなかった。

バレンシア先生は当然、なるべく早く手術をすべき、と考えていて、
「2週間後に手術する予定で進めましょう。病院の手術室を予約しますから。」と
まだ全ての検査の予約が取れていないうちに手術日を決めてしまった。

その手術予定日までに、検査結果が全て出揃うように、直近で検査できる日を調べ、予約をして、
病院に検査に行き、結果を取りに行く慌ただしい日々が始まった。
手術というゴールに向かって、与えられた課題をクリアしながら、懸命に走る障害物競争をしているようだった。

病院のCTスキャンルーム(病院HPから拝借しました)

CTスキャン結果のファイルは自分で持ち帰る


だが、最初の検査CTスキャンの結果に、ゴールまで走り抜く体力・気力を大きくくじかれた。

私のガンは”進行が早い特徴 aggresive features”を持ち、左胸全体に散らばっていて、
そのうち最大のものは5cm×4cm×2cm。
そして脊椎に転移している可能性がある、とまで書かれていた。

今まで健康には人の何倍も気を付けてきたのに、一体、どうしてこんなことになったのか。
これが自分の身に起きていることだとは、到底、信じられなかった。

CTスキャンの結果をバレンシア先生に相談したら、
「血液検査の結果も合わせて見て、転移の状況を判断し、手術をするかを決めましょう。」と言った。
幸いに、血液検査では骨の転移の傾向は見られなかったので、予定通り、手術をすることになった。

全ての検査が出揃い、コロナのPCR検査も済ませ(無事、陰性だった)、ようやく3日後に手術というところまで来た。
よれよれになりながら、手術というゴール目前までなんとか走ってきた。

が、ゴールを目の前にして、循環器専門医からストップがかかった。

「心臓超音波検査の結果もないと、クリアランス(手術許可)を出せない。」と言われたのだ。

すでに手術室を予約済みの執刀医バレンシア先生に相談した。
クリアランスを出すよう、循環器専門医の先生を説得してくれるのでは、と期待したが、
「仕方ないですね。手術室の予約をキャンセルして、10日後に再予約しますから、
すぐ心臓超音波検査を受けてきてください。」と申し訳なさそうな顔で言われた。

手術までの障害物競走、最後の課題。
心臓超音波検査は日系クリニックでも、近くの総合病院でも予約がいっぱいで、
しばらくの間、検査を受けられそうになかった。

頭を抱えていた私を見るに見かねて、日系クリニックのアシスタントの方が、予約で埋まっていたすき間に
私の心臓超音波検査を押し込み、検査結果を即日出す、という特別措置を行ってくれた。

その方のおかげで、循環器専門医の先生のクリアランスをもらうことができ、再度受けたPCR検査も無事、陰性。
予定された日に手術できることが決まった。
乳ガンという診断を受けてから、およそ20日後の手術日。
日本に帰らず、マニラで手術を受ける、と決めたからこその、スピード感だ。
なんとか手術というゴールにたどり着けると分かった時は安堵した。

だが、手術日が決まっても、不安と恐怖は、常に頭にあった。
手術が乳がん治療のゴールではないと、分かっていたからだ。
手術後、どんな治療が始まるのか、自分の人生がこれからどうなるのか、
不安はむくむくと湧き上がり、頭の大半を占めるのだった。

少しでも不安を減らすために、数年来、栄養学を教わってきたWong Kee Yew先生に相談した。
先生はシンガポール国立がんセンターでの勤務経験を持つ、がんを研究してきた生物学の専門家でもあり、中医学の専門家でもある。

Wong Kee Yew先生の栄養学講座の修了証書をもらった時

Wong Kee Yew先生の栄養学講座のクラスにて

先生の「ガン予防の栄養学」という講座を私は複数回、受けていた。そこで学んだことを守って暮らしてきた自分が、
なぜガンになったのか、先生の意見を聞いてみたかった。

Wong Kee Yew先生が送ってくれたバンブーソルト

先生は私の問診票を見た上で、2時間以上、丁寧に話を聞いてくれた。

「あなたの今までの食事・睡眠・運動には問題ない。
感情面がガンの原因でしょう。でも、私の専門は栄養学なので、
そこには立ち入りません。」と言い、
免疫力を高めるサプリなどを紹介してくれた。
マニラで手に入りにくいものは、先生が住むマレーシアからわざわざ送ってくれた。
先生の優しさはとてもありがたかったが、薦めてもらったサプリは不安と恐怖には効かないのだった。


ヨガ講師として、今まで習ってきた瞑想に加え、評判の良い先生の瞑想法など、様々な瞑想法もやってみた。
10年来、ヨガと瞑想に取り組んできたが、人生で最大の不安と恐怖を抱えていたこの時、今までで一番、瞑想をやったかもしれない。
瞑想をしている間はリラックスした感覚があったが、心にへばりついた不安と恐怖は、どの瞑想でも拭い去ることはできなかった。

何年も瞑想を学んできたのに、ふがいない。
自分は瞑想に向いてないのだ、と思った。

エネルギー・サイエンスの研究者Master Del Peから学んだ今は、自分が瞑想に向いていないのではなく、あの時の自分に必要な瞑想を行っていなかったのだ、と分かる。

当時の私のように、ネガティブな感情・思考に覆われた状態の場合、
それを取り除くために考えられた特別な瞑想法を行う必要がある。
こういった瞑想法のことをMaster Del Peは「科学としての瞑想 Meditation as a science」と呼ぶ。
想定された効果を生み出すために、守るべきルールが決まっているシステマチックなアプローチの瞑想法だ。
こういった「科学としての瞑想」の一つに、病気のエネルギーを取り除くヒーリング瞑想がある。
当時の私に必要だったのは、そのヒーリング瞑想だった。
必要なタイプの瞑想を選び、正しいプロセスで行えば、瞑想は薬のように、癒す効果がある。

だが、まだ、そのことを知らなかった私は、やみくもにいろんな瞑想を試していた。
もちろん、何もやらないよりは、いくばくか、ましだったと思うけれど。

どうやっても消えない不安と恐怖を抱えたまま、手術日を迎えたのだった。

※Master Del Peのヒーリング瞑想Just Be Freeはこちらのオンラインコース(英語)で学べます。
https://bihcglobal.myshopify.com/products/809761



筆者紹介:星屋智(ほしやちえ)
ブログ:Heal your energy 心と体を整えるエネルギーヒーリング・エクササイズ・瞑想
2013年から、フィリピン・マニラ在住。現地でヨガインストラクター、オンライン日本語教師として活動。
2021年 乳がんと診断され、手術、治療。治療の過程でエネルギー・ヒーリングと出会う。
2022年 World institute for incurable diseases (WIID)認定エネルギー・ヒーリング アソシエートスペシャリストの資格を取得。
オンラインでエネルギー・ヒーリングのセッションを行っている。