
自己を解放する力をもたらすために教育に何ができるのか?
学校での経験は、自分のありようを作り上げるのに大きな影響を与えます。自分の中にその経験は深く埋め込まれ、それを基盤に自己の形成がなされていきます。女性にとってその経験は、女性に向けられるまなざしのために、自分自身を抑圧するものともなり得ます。
実際、教師によって意識的・無意識的に用意される教育環境の中で、子どもたちによる自己理解の中核となるような何かが生み出されます。私の場合、それは「どんくさい」ともかちゃんをめぐるものでした。教師を含め皆から「どんくさい」とみなされ、いつの間にか私自身も自分を「どんくさい」とみなし、自分のできることややりたいことを「どんくさい」という自分についての理解から作り上げてきました。
本書は、学校の教室における日常の実践は、主として支配的な社会関係を映し出していると論じています。教育は子どもたちを既存の社会関係の中に配置し、それに合わせた自己形成を子どもたちに強いていると、本書は示唆します。
しかし、教育の力とは、本来は、人を抑圧するものではなく、力を与え、力を生みだすものです。本書はフェミニスト・ペダゴジーに依拠し、教室において、子どもたちが自己の人間形成の主体となって、自分や他者との新たな関わり方を探究できるフェミニズム教育の実践を構想しています。堺直子さんのイラストもすてきで、各章に描かれた糸の絡み方やその行方を眺めながら、その意味を考えたくなります。ぜひ手に取ってみてください。
◆書誌データ
書名:教室から編みだすフェミニズム――フェミニズム・ペダゴジーの挑戦
著者:虎岩朋加
頁数:272頁
刊行日:2023年10月18日
出版社:大月書店
定価格:2,300円(税抜)
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