エッセイ

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女たちの絆―竹村和子さん一周忌によせて   牟田和恵

2012.12.24 Mon

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.竹村和子さんが逝かれて一年が巡りました。ちょうど一周忌にあたる12月13日、彼女を偲んで、勤務先だった御茶ノ水女子大学のそばの会場で集まりが持たれました。会場には、きらきらとした知性的な眼が印象的な写真が飾られ、あの活き活きとしたチャーミングな竹村さんがそこにいるかのようでした。

もっとも身近で最期のときをともにされた河野貴代美さんから竹村さんの闘病の様子が語られて献杯をした後、参会者がそれぞれの竹村さんの思い出を語りました。それらの言葉からは、竹村さんがいなかったら日本のフェミニズムのシーンは大きく違っていただろうことが痛感され、今更ながら、私たちが喪った存在の大きさと、そして、彼女がもたらしてくれたものへの感謝が湧いてくるのでした。

一周忌に合わせ、竹村さんのご著書『彼女は何を視ているのか—映像表象と欲望の深層』(作品社)が刊行されました。これは、竹村さんご自身が2007年以来企画し構想を温めてきた映像・映画論集です。途絶してしまったこの企画を、新田啓子さん・河野さんら5人の女性たちが編集委員会を構成、竹村さんの遺稿を整理・編集し、完成に至ったものです。300ページにわたる大部の内容もさることながら、「美しい本を作ってほしい」との遺言の通り、竹村さんらしい、素晴らしい本となりました。

竹村さんの膨大で多岐にわたるお仕事の中から、映像論を洗い出し読み直して、竹村さんのオリジナルな企画を最大限生かしながら同書を再構成した編集委員会の作業は、容易ならざるものだったことでしょう。しかしまたそれは、竹村さんの声を心に聴きながらの、哀しくも刺激的なしごとであったのではないかと想像します。竹村さんとご一緒に仕事をさせてもらったとき、完璧主義ともいえる求められるレベルの高さに圧倒されながらも、彼女の熱意とエネルギーに励まされ、多大な刺激を受けた私自身の体験が、いかに得難い喜びであったかあらためて心によみがえります。

同書の刊行が竹村さんの研究・仕事上の仲間たちによるものである傍ら、同書には、竹村さんの闘病を支えた女たち、<チームK(和子)>の記録が小冊子にまとめられて付録となっています。2011年2月の発病以来、お別れの看取りまで、チームを組んで竹村さんを支援してきた仲間たち。その絆は、仕事上のものと重なりながらも、さらに多面的な配慮とサポートにわたります。所収の竹村さんのメールの文面からは、竹村さんがいかに彼女たちに深く信頼を寄せていたかが伝わってきます。配偶や血縁関係によらない、「非家族」の絆による、重篤な病と終末期の看取り。冊子作成の意図の一つに、その記録を残したかったとありますが、その意図通り、人の生き方やライフスタイルが多様化するなかで、こうしたかたちは、私たちがこれから辿っていく一つのモデルとなるでしょう。これも、フェミニスト思想をリードしてきた竹村さんの、女たちへのプレゼントであるような気がします。

同冊子には、生死をかけた病気になったからこそ初めて実感できた生と死の力学をとことん考え抜く新しい学問を創生すると、竹村さん自身の意欲満々の言葉が遺されています。彼女なら確かにそれができただろうに、そして私たち読者を未知の知的世界にいざなってくれただろうに、、、と残念でなりません。しかし今はただ、竹村さんが安らかに眠ってくれることを祈り、彼女がもたらしてくれたものを少しでも後につないでいけるよう、遺された者として自分なりに努めたいと願うばかりです。

 竹村さん、本当にありがとう。








カテゴリー:竹村和子さんへの想い

タグ:フェミニズム / 竹村和子 / 牟田和恵