2009.07.28 Tue
7月25日~26日、Weフォーラム2009 in 京都、初日の全体会(平成21年度京都市男女共同参画講座ウィングスセミナー)に参加した。
朝日新聞記者・竹信三恵子さんは「ミボージン」二代目。3人の子育てに追われた母と同じく「個人的なことは社会的なこと」を実感し、男社会の新聞社で働いてきた。
非正規雇用者比率は、1993年→2006年、男性9.3%→18.4%。女性38.3%→52.9%。若年層(15~24歳)は、男性22.5%→45.4%、女性23.6%→51.5%と激増している(総務省統計局「労働力調査」)。 2000年「OECD諸国の相対貧困比較」(要するに貧富の差)は、日本はアメリカに次いで2位。今は少し順位が下がったが、それは正社員の賃下げによる非正規との差が縮まったからだという。なんという皮肉。雇用劣化による不況スパイラル。雇用問題は、まさに「人権問題」なのだ。正規であれ、非正規であれ、誰にでも起こりうる劣悪化の状況をつかまえ、現実をきちんと直視しなければ。
日本の経済成長は、長時間労働の男と、育児・介護の福祉を担う女の性別役割分業に支えられてきた。しかし今や、それも幻想となりつつある。この10年、正規雇用は400万人減。正規といえども板子1枚下は地獄、安く使える代わりは、いくらでもいると、お構いなしの残業で過労死モード。600万人増の非正規は、いつ契約を切られるかわからない不安定雇用のワーキングプア。非正規のうち5割以上が女性。年収200万円以下、年金・社会保険なし、安全ネットから外れて暮らすカップルも増加傾向だ。当然、少子化の流れはとまらない。こんな状況で「何がワーク・ライフ・バランスなのか」と怒りの声が上がる。
99年、労働者派遣法改正後、大幅な規制緩和のもと、「夫がいるから、親がいるから安く使ったらいいよね」と、社会意識としての差別観念が罷り通る。同一価値労働同一賃金が保障されないなか、女性の働き方を標準とする、本来の「ワーク・ライフ・バランス」を可能にする道は?
ヨーロッパでは、不安定な働き方は社会の安全のためにならないと「有期雇用制限」が原則だ。「ディーセントワーク」(人間らしい働き方)をモットーに、フルタイムで働かなくても均等待遇を保障するワークシェアリングが進むオランダ。もともと専業主婦率が高かったオランダで、女たちが働きだしたのは、残念ながらフェミニズムの浸透ではなく、夫たちの失業だった。だが、働く女たちにとってフェミニズムは応援歌となる。子連れで働くには保育園が必要。無期契約で短時間労働を可能にする「労働時間による差別禁止」が法制化されたのだ。ノルウェーでは「パパクオータ制」が定着し、スウェーデンは女性議員の増加で財政の使い道が変わった。フランスの35時間労働制は、家事と仕事を両立させる働き方が基準となる。アメリカではワーク・ライフ・バランス経営こそ優良企業とされる。その背後には女性の社会進出があった。このように各国ともワーク・ライフ・バランスが徐々に女性差別をなくしつつある。
翻って日本の労働現場を変える方法は? 竹信さんは、今ある「標準」を変えようと呼びかける。「妻つき男性モデル」から「両立女性モデル」へ。「嫁福祉」からの解放。「ひとりでがんばる」から「困った時は助けを求める」、自立概念の転換。楽になるためにこそ、手間をかける。誰もが少数派、そこから多数派工作を始めようと。
竹信さんの論点は、職場で声を上げにくいなか、語ってくれた、たくさんの働き手たちへの地道な取材に裏付けられている。女も、男も、なお労働現場のハードルは高い。「だからこそ、もっと横柄に生きていこうではありませんか。それがワーク・ライフ・バランス」と竹信さん。うん、そうだ。女たちの生きやすさこそが、これからの「標準」なのだ。
(詳しくは次号『We』162号・10月1日発行)をごらんください。
http://www.femix.co.jp/
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