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ネコと暮らす(2):チビ1 bora
2009.11.11 Wed
チビは12年(厳密にはマイナス2年ですが)うちで暮らした、私がいちばん長くつきあったネコです。夏の終わりに旅行から帰ってくると、庭先にだれかが産み落としていった仔ネコがいて、それがチビです。6歳だった息子のたっての願いでうちに入れました。
当時のうちはネコ屋敷で、家の中に壮年の黒ネコのクロ、老年の茶色い縞ネコのチャイロ、それにこの仔ネコのチビのオス3匹が、庭先には入れ替わり立ち替わりやってくる数匹の馴染みのネコがいました。私はネコはネコ社会で暮らしてほしいと思っていました。それまでのいくつかの経験から、人間の都合で振り回すのは結局ネコのためにはならないと思ったからです。数匹がいると、ネコ同士で充足しているので、こちらの付き合い方も淡泊なものでした。 名前はテキトーに付けることにしていました。チビは小さかったのでチビと名付けたのですが、カゼを引いて医者に連れて行ったところ、じきにチビではなくなるから名前を変えた方がいいと言って笑われました。たしかにあっという間に名前に似合わない小太りの成猫になりました。
一般にオス猫はあまり長く居ついてくれません。気のいいクロは数年で発情期に蒸発し、しぶといチャイロは介護の挙げ句に他界しました。しかしチビは勝手に暮らしながら、ずっとうちに居続けました。子どもたちが友達の家へ行くときにはついて行ったり、帰宅途中に出くわして、一緒に帰ってきたりもしました。月夜の晩にお地蔵さんの前でタヌキと遊んでいたという近所の人の証言もあります。うちは山のふもとで、サル、イノシシ、シカ、タヌキなどの出没は珍しくなく、チビは野生動物の疥癬をうつされたこともありました。私が入院手術で2週間ほど留守にしたとき行方不明になり10日ほど帰ってきませんでした。ずいぶん心配しましたが、退院の日の朝になるとちゃんと姿を現わしました。
繰り返される発情期の闘いで、チビの耳は折れ、生傷は絶えず、歯はすっかりなくなり、ネコ相に凄味が増していきました。放任主義の私も、さすがに意を決してチビを去勢しに医者に連れて行きました。手術後迎えに行くと、大声でわめく甲高いチビの声が病院中に響き渡り、看護師さんが「声は、かわいいのね」と言ってくれました。しかしその後もチビの生活態度にはあまり変化はみられませんでした。すでに8歳になっていたチビは人間なら50歳くらいでしたから、ライフスタイルを転換するのは今さら無理だったのでしょう。
チビが10歳のとき、家の改築をすることになりました。ところが工事がはじまる2日前にチビはいなくなり、その後行方不明になってしまいました。正確には新しくなった玄関先に2度ほど現れたのですが、なぜか私たちを見ても逃げてしまうのです。その後はぱったり姿を見なくなってしまいました。工事の間に何か怖い目に遭ったのかもしれません。心のどこかが晴れない日々が続き、もうネコはこりごりだ、とこの時も思いました。ところが、2年が過ぎたある日、放蕩息子は帰還するのであります。(次回につづく)