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ネコと暮らす(3):チビ2 bora
2009.11.22 Sun
もう諦めかけた丸2年後の秋のある日、庭先に、外ネコのために置いてあったエサの残りを食べているのはチビだったのです。声をかけるとさっさと逃げてしまいましたが、後ろ姿がすっかりやつれ、黒いブチの背中が茶色くなっているのを見て、あらゆる手段を用いて何としても捕獲しようと決心しました。 幼少時より生物の捕獲に熱意を燃やしてきた息子の立てた作戦に従い、かごを買ってきました。かごの中にマタタビ入りのえさを置いて、入ったところをかごごと捕獲しようという、きわめてシンプルな作戦でした。待ち伏せていると、ほどなく現れたチビは、えさのみを巧みに奪い、かごをひっくり返して悠然と立ち去ろうとしました。
思い出してみれば、小学校時代の夏休みのアリの観察以来、息子のさまざまな野外作戦はほとんど成功したことがなかったのでした(彼は小2の夏休みの宿題に、4種類のえさを玄関先のタイルの上においてアリの集まり方を比較するという画期的な自由研究を行いましたが、4種類のえさの中に魚があったため、ネコに食べられ蹴散らされてしまい、比較研究はあえなく失敗に終わりました)。
もはや小手先のワザではどうしようもなく、私たちは我を忘れて「チビ、チビ」と呼びかけました。すると、チビが振り向いて目が合いました。でも手を伸ばすと逃げようとします。このチャンスを逃すまいと、チビの目を見て必死で「帰っておいで。ここはあんたの家なんだよ」と説得しました。人生であんなに一生懸命だれかを口説いたことがあったでしょうか。すると長い間じっと私たちを眺めた挙げ句に、チビは何か思い出したように、一歩歩み寄り、手の届く距離に近づいてきたので、ここぞとばかり二人がかりで取り押さえ、やっとの思いで捕まえました。じたばた騒ぐチビを家に入れて、改築前のまま残っている古い部屋へ連れて行くと、目が覚めたように落ち着き、昔のチビに戻ったように見えました。
ネコは家につくと昔から言われていますが、チビにとってはネコ同士暮らしていた古い家が自分の家で、それを壊した私たちに腹を立てていたのかもしれません。チビは没後に、霊感の強い(?)娘の夢に数回現れましたが、いつも改築前の古い居間にいるのだそうです。
2年にわたる放浪生活ですっかり体をこわしていたチビは病院に通いながら1年半ほどの時間を、家から出たがることもほとんどなく、文字通りの余生として静かに暮らしました。以前は人間と一緒に眠ることはありませんでしたが、余生はいつも私の布団で眠り、朝5時頃になると私の顔を舐め頭髪を掻きむしって起こしてくれました。2月2日がチビの命日です。