2010.11.29 Mon

WAN:今回は子どもの人権を守ろうと地道な活動を続けてきた「エクパット・ジャパン・関西」の共同代表 坪井眞規子さんにお話を伺いました。エクパット・ジャパン・関西では、子どもの安全のための教材の普及にも努めています。「SAFEプログラム」(Survival And Fairness through Empowerment)では、国際教材奨励事業AWARDを受賞されました。
WAN:「エクパット・ジャパン・関西」は、いつ頃からどんな活動をされているのですか?

共同代表の坪井真規子さん
坪井:エクパット・ジャパン・関西は、「子ども買春・子どもポルノ・性目的の人身売買に反対する国際NGO」で、アドボカシーの活動をしています。
「アジア観光における子どもの買春をなくそう!キャンペーン」(The International Campaign to End Child Prostitution in Asia Tourism)として1992年から活動をしています。英文の頭文字をとってECPAT(エクパット)といっています。最近は、子どもポルノがインターネット上にも広がり、様々な形で被害も拡大、各国で大きな問題となっています。

WAN:日本でも「児童買春・児童ポルノ等の規制に関する法律」が出来ましたね。
法律案の時から、提言などをされていたと聞きますが。
坪井:国際的な世論の盛り上がりで日本でも法律が作られようとしていた1998年、「児童買春・児童ポルノ等の規制に関する法律案」が、旧与党の児童買春等規制法プロジェクトから上程されました。
キャンペーンを始めた時は、「日本人がそんなことするの?」と全く見えない問題でした。学習会を重ねると男性からは「女は罰せられるけれど、男は罰せられないんだよ。(売春防止法)」という声が聞かれ、意識の問題だけでは限界があると思い知らされました。法律をつくれるとは思ってもいませんでしたが、ロビー活動を始め、議員立法として提出できるよう議員さんと法案の枠組みを考え、法制局と論点整理を重ね「児童買春・児童ポルノ等の規制に関する法律案」が上程されました。
法案作成過程は、とてもエキサイティングな経験でしたけれど、制定されたときには、私たちはすっかりしょげていました。
WAN:えっ? それはまたどうしてですか?
坪井:この法律が子どもに対する性的搾取、性的虐待は子どもの権利侵害とされど「子どもの権利擁護を目的とする」とされたことは、何より大きな前進でした。当初は「青少年の健全育成のため」とされていましたから。そして売春ではなく買春という言葉が法律用語になりました。ただ子どもポルノの定義が子どもの権利侵害というより「わいせつ物」規制になっているのではないかと私たちはこだわり続けました。
キャンペーンでは、子どもポルノはわいせつだからなくそう!というのではなく、ポルノの製造の現場で子どもが虐待されている、その永遠の記録が子どもポルノなのだからなくそう!と訴えてきました。その写真やビデオがいつどこで誰に見られているか分からない不安を一生抱き続ける事になります。ある子どもは私だと分からないようにと食べて食べてあえて太ったのだと話してくれました。
法律の条文が「性欲を興奮させ又は刺激する物を視覚により認識することができる」とされ、子どもの権利の擁護というより、わいせつ物の規制、社会的な性道徳秩序維持に近いのではないかという不安がつのりました。そこで、私たちが通したかったことは何だったのかを考えたとき、お金が介在する買春やポルノのような商業的なものだけでなく、子どもへの権利侵害である性虐待すべてを禁止する法律が必要なのだと思い至りました。私たちが望む「子ども性虐待禁止法」をつくり、冊子にして訴えましたが、法案を変えるには及びませんでした。
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ちょうどそのころですよね。「子ども性虐待防止白書」(ウイメンズブックストア松香堂)を出版したのは。その後「白書スクールセクシャルハラスメント」も、子ども性虐待防止市民ネットワーク大阪として出版しました。当時は子どもが訴えても二次加害、二次被害の状況がひどく、それが子どもへの性的虐待とはつながりませんでした。子どもへの性虐待とは大人が自分の性的な満足のために子どもを使用する事と話すと「あの時の中学の担任の行為はセクハラだったのだ」と意味付けられるようでした。
WAN:子ども性虐待が世界的な問題となり、世界会議がもたれるようになりましたね。
坪井: 1996年には第1回の「子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」がストックホルムで開かれ、犠牲となった児童が犯罪者として処罰されることを防ぐ国内法や政策を進めるよう、また子どもを罰しないことや、子どもの汚名を取り除くための有効な行動を取るなどの行動綱領が採択されました。
それまでは、売春宿に子どもがいると通報を受け、救出した女の子に最初になされる事は各国にある売春防止法や禁止法で処罰されることでした。日本では援助交際がメディアを賑わし、中・高校生のふしだらな性的逸脱行動と女の子が非難されていました。大阪府警は「援助交際は売春です」というポスターを作成し、メルクラにアクセスした高校生を検挙していました。
世界会議後、関連省庁(厚生労働省、法務省など)と共に「犯罪です。子ども買春」というポスターを作成しました。子どもではなく大人の側の犯罪だという事です。青少年の健全育成による不道徳な淫行や子どもに見せたくない有害図書規制(道徳視点)から、子どもの人権を侵害する性虐待、搾取としての商業的な子ども買春、ポルノ規制(人権視点)への転換です。
ところが最近の新聞報道では、携帯サイトに「写真売ります」と自分の裸の画像を売ったとして「児童買春・児童ポルノ等の規制に関する法律」違反(提供)によって、女子高校生が逮捕や書類送検され、非難さているので、衝撃を受けています。
WAN:世界会議にはエクパット関西からも参加されたとか。成果はいかがでしたか。
坪井:2008年には「第3回世界会議」がブラジルのネオ・デ・ジャネイロでありました。政府とNGOの対等な共催会議です。日本からもストップ子ども買春の会、エクパット関西などが参加しました。参加国は、アフリカからも多くなり増えました。当事者である子どもたちも会議に参画し、私たちの声も聞けと力強く発言し宣言も出していました。
リオ会議は、「子どもと若者の性的搾取に反対する国際会議」とされ、「商業的」という言葉がはずされました。ネットを通じて流されるポルノは、必ずしも商業的なものいでないものもあります。子ども自身が自分の映像を流すというようなことも起こっています。今では漫画や、アニメの問題や、ネット時代になってますます問題は複雑多岐にわたっています。インターネット上の対応をするにも、子どもの権利を擁護するという観点から考えたいものですね。今日は、この問題の出発は何だったのかをお話しできてとても嬉しかったです。

エクパット関西では、学校や地域で活用できる「SAFEプログラム」Survival And Fairness through Empowerment(エンパワメントを通じて生きる力を育み公正を実現するプログラム)(国際教材奨励事業AWARD受賞)という子ども自身が自分を守れるよう、「安全」や「安全を守る」ってどういうことかを判り易く13枚のイラストボードにした教材を作成しました。先生用の教材解説冊子をセットにして頒布しています。どうぞご利用下さい。
(文責 中西豊子)
カテゴリー:団体特集
タグ:DV・性暴力・ハラスメント / 性的虐待 / ポルノ
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