エッセイ

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プリズンビジット【サンフランシスコ便り(4)】 堀川弘美

2011.08.15 Mon

CHowchillaへ行ったメンバー

7月1日に引き続き、8月5日にChowchillaというところにあるValley State Prison for Womenを訪問した。今、わたしがインターンシップをさせてもらっているLegal Service for Prisoners with ChildrenというNPOがFamily Law Assistance Class を十数回に亘りワークショップをしていて、わたしはその4回目、5回目にくっついていかせてもらった。前に来たときは、移民の人たちに弁護士さんがワークショップを提供していた。今回はやはり弁護士さんがDependency Courtのことについて参加者の方々によるロールプレイを入れながら4時間のワークショップを行った。

弁護士さんがしゃべっている最中でもどんどん手が上がり、質問や意見が飛び交う。何を話しているのかはわたしの英語力不足でほとんど分からないけれど、多くの人が子供の話をしていた。少し前に女性の収容者の約7割は精神的に病んでおり医療措置が必要とされていると聞いていた。わたしが今回一緒の時間を過ごしたのは20名の収容者。言葉もうまく交わせないし、知識も経験も環境もおそらくかなり違う中で生きてきただろうし、空気を読むことも、雰囲気を感じ取ることも難しい。そんな浮いた存在のわたしが感じたことだけれど、とにかく書いておこうと思う。

CHowchillaのゲート

自己紹介のときから泣き始め、質問、意見を泣きながらとめどなく繰り返している人がいた。不確かだけれど、彼女が収容されている間に子供ががんで死んでしまった、そしてそのことを誰も教えてくれなかった、ということをずっと訴えていたような印象がある。インターンの言葉の分からないわたしにでさえ、身振り手振りで椅子から立ち上がって話をしてくれた。その勢いに圧倒され、また彼女の苦しさだけがどっと伝わってきて、苦しくて、直接話してくれた内容はまったく記憶にない。4時間経って、帰る頃、彼女は少しだけ呼吸が深くなっていたような気がする。戻って来ない子供のこと、自分のどうしようもない状況のことを言葉にして吐き出して、聞いてもらうことで、わずかながら、でも確かな変化が彼女にあった。この感想をどこに位置づけたらいいのか、まだよく分からないけれど、強く印象に残っている。刑務所に関わる運動の意義と結び付けることも可能だろうし、刑務所内での精神的なケアの実体がどうなのか、という批判の一つの基盤にもなるかもしれない。でも今はあまり急いで言葉にしてしまわないで、彼女たちの顔や表情をしっかりとわたしの中に刻み込んでおきたいと思う。刑務所の中にはこんな悲しい話が溢れている。

アメリカの中でアジア人として生き続けることを考えざるを得ない。日本では意識しなかったことで、初めての経験だ。ラティーノの人たち、アフリカンアメリカンの人たちの収容者数の圧倒的多さ、数の多さが言葉に比例するのか分からないけれど、彼/女たちに関わる言葉は、アジア人の収容者に比べて比較にならないほど多い。アジア人が依然として“other”の中に含み込まれ、統計もない状況で、実体がつかめていない。でも、そのアジア人がまたよく分からない。今回もおばあちゃんが日本人だという女性と会った。外見はアフリカンアメリカンのように見える。このような人はいっぱいいる。どんな風に〜人と定義しているのか、LSPCのスタッフの方に聞いたけれど、非常に曖昧なままなのが実体だと言われた。州によっては収容者の人種を明記し、また写真も公開しているところもある。カリフォルニア州は、ホームページではそこまで公開していないし、写真もない。ここにいられる間にこの点についてももう少し情報を得る努力をしてみなければと思っている。

今月はVacavilleというところにある刑務所、San Quentinという比較的重罪の人たち(カリフォルニアの男性の死刑囚はすべてここに収容されている。ちなみに女性の死刑囚はわたしが訪問したChowchillaに収容されている。)が収容されている刑務所を訪問する予定だ。Vacavilleでは刑務所内にある精神科の入院施設を見学させてもらうことになっている。日系の人もここにいる、と聞いている。守秘義務などの関係でどこまで書くことができるのか自信はないけれど、できる限り共有できるように書いていきたい。

LSPCのスタッフのJerry(右側の大きな人)と一緒に

カテゴリー:サンフランシスコ便り

タグ:アメリカ / 堀川弘美 / 刑務所

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