2011.09.15 Thu
8月のお便りの最後に書いていたように、この一月間にSan Quentin State PrisonとVacavilleというところにある刑務所付属の精神科病棟に行った。今回はSan Quentinでのことを少し書かせてもらいながら、4年前までその中で「収容者」としていて、それ以降はボランティアとしてその刑務所を訪問しているEddyのことを書かせてもらいたい。
8月19日、Asian Health Serviceのメンバーの一員としてSan QuentinのHealth Fareに参加。各刑務所で一年に一回催されているものだという。歯、目、耳の検査、血圧やコレステロールなど検査、ヨガやカイロプラティックの施術、また私が加えてもらったグループのように、特に身体的なことに関わるサービスではなく、相談に乗る、というサービスが朝から昼の2時まで刑務所内の運動場の片隅を使って行われた。
中の人と区別するために着る洋服に制限があったり、ワイヤーブラがセキュリティチェックでひっかかったりするのは、前に行った女性刑務所と同じ。ゲートを入ってすぐのところでは白い服を着て手錠をかけられた人たちが一人につき、一人看守に付き添われて歩いている。そこを通り過ぎて運動場へ。収容されている人の服装も様々で、最初はボランティアとの区別がつかなかったが、のちのち中の人と外の人との差を思い知らされることになる。30分から一時間おきに、サイレンのようなものがそれほど大きくない音で鳴る。その瞬間、中の人たちは地面にしゃがみ込み、動きを止める。中の人以外はしゃがんではいけない、とのこと。必然的に見下ろすような形になってしまって心地悪かった。
一緒にボランティアに来た友だちを探してうろうろしていたら、「あちらの建物にいるよ」と教えてくれ、連れて行ってくれたり、カイロプラティックの施術を受けてみたらと勧められて受けたり、目の検査をしたり、よくわからないままふらふらしていたのだが、その間一緒にボランティアとして行ったメンバーは結構焦って探していた、という。ブラウンカードというものがあり、それを持っていない私のようなボランティアは、それを保持しているボランティアの周りから離れてはいけないという。トイレのときでも一緒に行ってもらう必要があるとのこと。そのことを事前に説明してくれたのかどうかわからないけれど、英語はちんぷんかんぷんでそのときまで私は理解していなかった。一緒に行ったEddyが探してくれて、ゆっくり説明をしてくれてやっと状況が分かり始めた。「ここは刑務所。」「あっちへ行こう、こっちへ行こうと誘われても絶対に行ってはいけない。」と言ったEddyの真剣な表情が頭に残っている。Eddyは16歳のときに罪を犯し、21年間中にいて、2007年にこのSan Quentinの刑務所を出てきたばかり。Eddyがどのようにして20年以上の時間を中で過ごしてきたのか、十分にわかっていないが、刑務所内での殺人、自殺、差別、暴力の話をよく耳にする中で、おそらく危険な目にもあってきたのではないかと想像している。「Eddyと出会って自分は変わったんだよ」、という元収容者の人と多く会った。それはつまり目立っていることであり、その分危険な立場に立たされていることも意味しているように思う。今でも普段から周りに鋭いアンテナを張っているように見えるのは気のせいではない。そのEddyが自分自身、4年前まで収容されていた刑務所にボランティアとして戻る気持ちを思うとその緊張感と強さとに圧倒されそうになる。お昼ご飯も食べずにいたEddyの姿が今も忘れられない。
9月10日、今、私が住まわせてもらっているおうちで、イベントをした。Eddyと彼をサポートし、またAsian Prisonerに焦点を当てているAsian Prisoners Support Committeeというグループを作っている若い子たち4人を招いた。5月からバークレーに住み始めて出会った刑務所とは縁遠いところで生きて来られた人たちを中心に呼んで、「おしゃべり会」を企画した。これは人の出会い方や関係性の紡がれ方に興味のある私の挑戦であり、運動であり、実験だったと思う。40人もの人が来てくれ、12日の今、参加した方々からいろいろなコメントをいただいている。それを軸にしながら、また来月、この出会いがみんなのココロにどういう形であるのか、また変化していくのか、私なりに感じたことを報告させてもらいたいと思う。それまでにぜひ2分程度の映像、Eddy Zheng Storyを検索して観てもらいたい。
10日の出会いの経過を、長い期間かけて見続けていきたいと今、強く思っている。
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