エッセイ

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離婚の方法 【打越さく良の離婚ガイド】NO.1-3 

2011.11.18 Fri

【打越さく良の離婚ガイド】NO.1-3 離婚の方法

 3 裁判離婚とはどういうものですか

調停はあくまで話し合い。調停で話し合いがまとまらず,合意できない場合に,それでも離婚するためには,裁判をするしかありません。

◎調停前置主義
 被告(あなたが訴えるとしたら,あなたの夫か妻。あなたは「原告」です。)が行方不明といった事情がない限り,離婚訴訟を提起する前に,調停で合意できなかったこと(調停不成立,調停取下)が必要です(調停前置主義,家事審判法18条1項,家事事件手続法257条1項)。家庭裁判所で,調停不成立証明書(調停取下証明書)をもらってください。離婚の訴状に添える必要があります。
 

◎管轄,訴訟提起
 離婚訴訟を提起するには,訴状を管轄の家庭裁判所に提出する必要があります。具体的には,あなたかの住所を管轄する家庭裁判所です(人事訴訟法4条1項,民事訴訟法4条2項)。調停を行った家庭裁判所でも受け付けてくれる場合もあります(人事訴訟法6条)。よくわからなければ最寄の家庭裁判所に問い合わせてください。

調停不成立の日から2週間以内に訴訟を提起したときは,当初の調停申立ての時に訴訟提起したものとみなされ(家事審判法26条2項,家事事件手続法272条3項),調停申立書に印紙を貼付して納付した手数料(1200円)は,訴訟提起時に納付すべき印紙額に充当されます(民事訴訟費用等に関する法律5条1項)。ただ,1200円お得だからといって,慌てて訴訟提起するのはお勧めしません。入念に訴状を準備しましょう。
離婚のみ請求する場合は,13,000円の印紙と6,400円の郵券(切手)が必要です。その他財産分与,慰謝料も請求する場合は,印紙の金額が変わります。

 訴状には,「請求の趣旨」と「請求の原因」を記載します。「請求の趣旨」には,離婚,未成年の子どもがいる場合にはその子どもの親権者の指定,養育費の請求(原告を親権者と定めるよう求める場合),慰謝料,財産分与,年金分割の請求を記載します。「請求の原因」には,「離婚原因」が何であるかを記載します。訴状の書式は,裁判所のHPに掲載されています(http://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/syosiki/syosiki_01_39.html)。

 訴訟提起の際には,訴状,証拠書類,戸籍謄本,調停不成立証明書,印紙・郵券を提出します。訴状と証拠書類は,裁判所用の正本のほか,被告に渡す副本も必要です。年金分割を請求する場合は,年金分割のための情報通知書を提出します。年金分割の情報通知書は,社会保険事務所に申請して入手します。訴状作成等が難しければ,弁護士に委任してはいかがでしょうか。
 
 離婚原因とは協議離婚や調停離婚では,お互いに合意しさえすれば,離婚が出来ます。しかし,判決で離婚を認めてもらうには,民法770条1項に定められた5つの離婚原因のいずれかにあてはまることが必要です。

① 不貞行為があったとき
 配偶者が第三者と不貞した場合です。原告が不貞した場合は,逆に「有責配偶者」からの離婚請求として認められにくくなります。

② 悪意の遺棄
 生活費を渡さない,家から追い出すなど。ただし,病気やリストラなど,自分のせいではない事情で生活費を渡せないことは,悪意の遺棄にはあたりません。

③ 3年以上生死不明のとき

④ 強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき

⑤ その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
 ドメスティック・バイオレンス(DV)などが典型です。第三者と性行為があったかどうかまでは不明でも(つまり,①の不貞行為があるかは定かではなくても),デートを重ねていて親密すぎる関係が認められるときにはこの⑤があるとされるときもあります。

◎訴訟提起から判決・和解まで
 訴訟提起後,1か月程度後に第1回期日が指定されます。あなたが訴えられる側(被告)であれば,第1回期日への呼出状と訴状等の副本が届きます。あなたは,第1回期日の1週間程前に,答弁書(正本,副本)を家庭裁判所に提出します。答弁書には,請求の趣旨に対する答弁(「原告の請求をいずれも棄却する」)と,請求の原因に対する認否(認めるか認めないか)と反論を書きます。

 その後の期日も概ね1か月~1か月半に1度の割合で開かれ,争点を絞っていき,原告・被告双方の尋問を行った後,判決となります。争点が少ないか多いかなどで,判決までの時間は事件ごとに様々ですが,訴訟提起から大体1年から2年の間に,家庭裁判所の判決までたどりつきます。

 家庭裁判所が離婚原因ありと認めたときには,離婚を認める判決が,離婚原因ありと認められなかったときには,請求を棄却する判決が,出ることになります。不服があれば,高等裁判所に控訴します。
 裁判の途中で,離婚と条件について合意ができれば,和解することもできます。裁判所が和解の内容を和解調書にまとめてくれます。和解調書も,判決と同様の効力があります。たとえば,和解調書通りに養育費を支払ってもらえない場合には,相手の給与等を差押えることができます。

カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド

タグ:非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / 弁護士 / フェミニズム,家族,離婚, 打越さく良,エッセイ,離婚ガイド,親権