2012.05.28 Mon

「東日本大震災、福島第一原発の事故を受けて「人と人とのツナガリ」を私たちは強く考えました」として、始まった、子育て中の人びと同士をつなげるための集い。インタビューのさいに、おひと方からいただきました。
5月19日、夕方には、「原発を問う民衆法廷」を郡山市にて開催するために、尽力されてきた方数人と、20日の法廷にて申立人として意見陳述を行う方とお話した。
6時から食事を挟んでのお話となったが、約4時間、打ち解けてお話できるまでの時間も含め、ほんの少しではあるが彼女たちの取り組みと、訴えと、そして、原発の問題は、福島「の」問題ではなく、むしろ、わたしたち日本社会の、ひいては、世界の問題でもあるという主張を、お伺いすることができたと思う。
チェルノブイリから、ずっと福島での原発廃炉を訴えてきた人たち、今回の原発事故以降、自然食品に心掛けてきたこともあって、自らの健康、人々の健康に対してあまりに無関心な行政に怒りを感じずにはいられなくなった方、福島の自然を愛し、自然のままの梅干しやジャムを作り続けてきた人。
今回の法廷開催に協力するきっかけは様々だが、彼女たちに共通するのは、民主主義をないがしろにする日本の政治と行政への深い憤りであった。つまり、市民一人ひとり、子どもたちの健康を守ることよりも、自治体としての、あるいは国家としての体裁にこだわる、その理不尽さに、午後お会いしたS さんとはちょっと違う意味で、「もう笑っちゃいますよ」という諦めにも似た、深い絶望感も時々にじませながらお話された。
今回、郡山市でじっさいに彼女たちのお話を聞くことができ、もっとも愕然とするのは、わたしのように原発事故などなかったかのように、日常生活を送ってしまっている電力消費地の者と、今なお見えない放射能汚染と闘い、見えないけれども確実に存在する放射能から逃れるために、政府や自治体、教育委員会にかけあい、地元の生活と安心できる暮らしを求めるその狭間で奔走する彼女たちとの、その落差である。
京都からいきなりやってきたわたしに、それでも彼女たちは、丁寧にお話してくれた。
・原発問題にとって「現地」とはどこか、「当事者」とは誰か?
・当事者意識をもつことが、まず脱原発の第一歩
・「がれき」問題については、民主的対話、福島に生きる「わたしたち」とそれ以外の人びとのあいだに対話がない
厳しいお言葉をいただきながらも、日本社会全体で考えなければならないことへのヒントをいくつもいただいたと思う。
まず、広島・長崎の教訓、チェルノブイリの教訓から、わたしたちは放射能の未来に与える影響について、しっかり見つめ直すべきだ。復興を唱える人たちの多くは、「以前のような生活に戻ること」を至上命令としながら、じつはあまりに近視眼的な今しかみていない、と彼女たちは厳しく批判する。そう、わたしたちは「以前のように」安全神話に頼ることもできないし、おそらく、生活のスタイルそのものを変えなければ、放射能が与える不安のない生活には戻れない。
チェルノブイリ以降、反原発運動を担ってきた彼女たちは、福島第一原発が40周年を迎える2011年3月26日に向けて、ハイロアクションを続けてきた。福島第一原発ができた当初、原発の寿命は30年とされていたのに、それを捻じ曲げて、40年を超えて稼働を続けようとしていたからだ。
そして、3月11日を迎えることになる。彼女たちは、2週間後の11年3月25日に緊急声明を出し、「原発震災発生から2週間、私たちは混乱と恐怖、故郷と生活を失いつつあることへの悲しみと憤りの中で、生き延びる道を探しています」として、子どもの避難の実現、避難区域の拡大、安全圏への移動が困難な人への生活支援など、いくつかの具体的な提案までしている。廃炉に向けて、ずっと声を挙げてきた彼女たちの、腹の底からの怒りと、深い悲しみはいくばかりのものだったのか、これはもう想像を絶しているとしか、言葉がない。
彼女たちの言葉すべてをここに紹介しきれないことを、どうか許して下さい。ただ、ほんの一部を紹介します。
「やることがたくさんあって、だけど時間は進んでいる。もう間に合わないかもしれない。思ったより、ひどい」
「とにかく、世界中のひとたちの助けが必要です」
「殴られながら、走っている感じ」=これは、福島県内で放射能対策を強く訴えると、多くの嫌がらせにあうとの文脈のなかで
「手を差しのべられているのは分かっているが、届ききっていない。今子どもたちは、ここを生きているのです」
そして、極めつけだったのが、
「やって欲しいということはやらない、やるな、ということはやる」 :不条理の政治ここに極まり、である。
そして、わたしがインタビューしているその日、郡山市立美術館では、『鉄腕アトム60周年』記念展が開催されていた、のだ。
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