原発ゼロの道 エッセイ

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原発を問う その4 大阪法廷パート2 ③ 岡野八代

2012.07.03 Tue

法廷では、いつも申立人として2,3名の方が意見陳述をされます。証言者は、専門家の方が多く、証言者の方には民事の場合は代理人からの主尋問、そして、被告側(国、電気力会社はもちろん、民衆法廷など見向きもしてくれませんから)の代弁をする、アミカス・キュリエという被告の代理人が反対尋問をします。

さて、今回は、かつて原子力発電所の配管工として働かれた経験をお持ちで、下請労働者のための労組を組織された斉藤征二さん、そして、伊方原発で、なんと40年にわたり伊方原発の反対運動をされてきた、斎間淳子さん、そして、低線量内部被爆の危険性を研究されてきた、入江紀夫さんでした。

斉藤さんの訴えは、81年に労組を結成した理由、雇用不安、健康保険・雇用保険がないこと、放射線をいつ大量に浴びるか分からない危険な仕事、すなわち非人間的な仕事に従事せざるを得ない、そうした下請労働者の現状から始まりました。

70歳を超えた現在、甲状腺手術、急性心筋梗塞手術、腰部脊柱管狭窄症手術などを繰り返し、体調不良に苦しんでいるという斉藤さん。原発作業員であった多くの仲間の死因の一覧表、原子炉内部の様子、蒸気発生器などが非常にコショウしやすいことなど、短い時間のなかで、いかに原発稼働が危険で、しかも、故障なのか何なのかよく分からないトラブルが連日起きているということを訴えられました。

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わたしたちは、事故やトラブルのさいの重要な工具は、第一にモップ、そして、「雑巾、ぼろ布、バケツ」だという斉藤さんの証言に驚がくするばかりでした。内部では、水漏れ、蒸気漏れは日常茶飯事で、多くの作業は、放射性物質の除染と除去だそうです。とはいえ、そうした事実は、さまざまなルポルタージュのなかでじつは、わたしたちに知らされてきました。原発が、そうした非人間的な作業をする「ひと」を必要とすること。労働という観点からも、原発が存在することと「人権」が両立しないことを訴えてきた人たちがこれまで多くいました。しかし、まさにわたしたちは、見て見ぬふりを続けてきたに他なりません。

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.そういう意味では、伊方原発一号炉の設置許可取り消し裁判という、日本で最初の反原発裁判は、もう40年近く前の73年に提訴されていました。現在のわたしたちがようやく気づくことになった原発の危険性は、すでにこの裁判で訴えられていました。斎間さんの夫である満さんは、原発の危険性を伝えず、また電力会社の都合のよいことだけを報道し続けるマスコミに嫌気がさし、ご自身で『南海日日新聞』を発行された方です。

「核と人類は共存できない。子孫に禍根を残さないために」

それが、斎間さんたち、40年にわたる反原発運動を支えてきた信念です。

伊方原発の近海では、湾が白い腹を出した魚の死骸で埋め尽くされるほどの、魚の大量死が何度も発生したそうです。また、斎間さんたちの運動は、驚くような嫌がらせにあい、また、斎間さんのお子さんたちは、原発で勤める親をもう子どもたちと同じ学校に通う、という子どもたちの世界にも、政治的な力を及ぼします。

斎間さんは、「原発は子ども達から未来への希望を摘み取っている」とはっきりと訴えられたのです。

入江さんは、日本政府の「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」の報告書が、一見内外の知見を結集させて結果を導き出しているかのように見せながら、低線量被ばくの危険性を説いた重要な、国際的な疫学調査を参照することを避けているかを説明された。

政府によるWGは、「100ミリシーベルト以下の被ばく線量では、発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しいとされている」と結論づけたのですが、15カ国の原子力産業に勤務する動労者40万人以上を追跡研究した結果は、低線量においてもリスクが認められると、原子力産業自らが認めたといいます。

また、さらにドイツ政府による研究によれば、発電所周辺の小児がんについては、すべてのがんで発症率が高く、なんと白血病に限れば発症率は、2,19倍となる結果がでているといいます。他方で、政府WGは、子ども・妊婦についていも、100ミリシーベルト以下の低線量であれば、発がんのリスくの「明らかな増加を証明することは難しい」と結論づけているのです。

このWGの結果を読んでいると、「証明することが難しい」を連発し、あたかも、将来のガン発症と島原発事故とは因果関係を証明できないことを期待しているかといぶかりたくなります。

たしか、WHOが日本における被ばく量の積算を、「最悪のケース」で試算したのに対し、日本政府はそれは最悪を考え過ぎ、と抗議したことを彷彿とさせます。リスク管理とは、つねに最悪を想定することが必要条件であるはずです。ですが、WGの報告を一瞥するだけでも、日本政府はまだまだ、「安全神話」にしがみついているとしか思えません。

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.前回②の記事で紹介できなかった、二人目の証言者は、ルポライターの明石昇二郎さんでした。

明石さんは、10年ほど前に、雑誌『週刊プレイボーイ』にて、福井県の嶺南地方(つまり、福井県のなかで原発立地が集中する若狭や敦賀のある地方)で九亜製リンパ腫の発生率が高いかを調査したルポライターです。

福井県をめぐっては、原発銀座からは、福井県の県庁所在地である福井市よりも、京都や、関西の水源である琵琶湖のほうがよっぽど近く、そのため、「被害地元」という新しい考え方を、京都や滋賀の知事たちが使い始めたことが話題となりました。福井県のなかでもなぜ、この地域なのか。地図を見ると、そこからも福井県内のパワーポリティクスを感じてしまいそうな、集中ぶりです。ちなみに、福井県知事が仕事をしている福井市は、たとえば大飯原発から80キロも離れています。

さて、明石さんのルポは、嶺南地方に住む人からの情報で、なにかがおかしい、健康被害がでているようだと聞き、個別にひとり一人の住民たちに健康状態を聞いた結果である。「もちろん」掲載直後すぐさま、当時の福井県知事が地元のテレビ局を引きつれて出版元に抗議にやってきたようです。医学を専門とする明石さんではありませんが、かれは、実際住民ひとりひとりの健康調査をして、その事実が公表されることが大切だと訴えました。

かれはまた、地元の小児科医からの連絡で、妊娠22週目から産後1週間のあいだに、胎児もしくは新生児が死亡する率がどうも高いという情報を得、そのことも調べています。専門用語では、周産期死亡率と呼ばれるこの死亡率は、たしかに、かれが示してくれたグラフでは、半径10キロ、20キロとみていくと、全国平均とは明らかに有意な差が認められます。

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じつはわたしは以前、東京大学社会科学研究所が主催していた、「希望学」プロジェクトという研究プロジェクトに参加していたことがあります。

そこでは、希望について様々な統計上の調査を行っていて、その結果、自治体のなかで福井県は、県民の81%が福井県に住んでよかったと答え(2007年調査)、そして、「希望学」調査でも、希望がもてると答えた県民の割合が日本一だった県です。

明石さんは、ルポライターとして事実に基づく現実を忠実に書いたのだとおっしゃられる一方で、「福井県は実態をみずから調査せよ」と強く主張されました。明石さんが疫学・医学の専門家でないために、さまざまな嫌がらせも受けたはずです。ですが、一方で、県民の幸福度「日本一」を誇りつつ、こうした実態調査に手をつけていない、あえて回避しているとすると、いったい幸福ってなんだろう?と考えこまざるをえません。(ちなみに、以前は、福井県 幸福といれるとすぐに、県のホームページにて、県民の幸福に関する知事の言葉がヒットしたはずなのですが、今現在では、そのページがなぜかみつからなくなってしまいました)。

この記事を書いている段階では、大飯原発再稼働まで秒読みに入っています。

希望と原発・・・・これほど相いれない言葉はないだろう、と前回の郡山市での法廷に続いて、深く思いを巡らせました。

次回は、7月15日、広島にて法廷は開催されます。広島ということもあり、わたしたちに判断を迫る問題は、被ばくについて、です。

(岡野八代)








カテゴリー:脱原発に向けた動き / 震災

タグ:脱原発 / 原発 / 岡野八代

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