2012.07.18 Wed
【打越さく良の離婚ガイド】NO.2-2(11) 調停委員とは
11 調停委員ってどんなひとですか。
◎ 調停委員の役割
離婚調停は,裁判官と調停委員2名(通常男女1人ずつ)からなる調停委員会が進めていきます。
裁判官は,同時に多くの事件を担当しているので,その全部に始終立ち会うことはできません。そこで,事前に調停委員と,事件について意見交換して,どのように進行していくか,争点は何か,当事者からどのような点について事情を聴くか,当事者にどのような資料の提出を求めるか,などについて,話し合っておきます。このような話し合い(評議)をした上で,調停委員2名で調停を進行させていきます。
調停委員は当事者と直接長時間同席し,双方(申立人,相手方)から長時間事情を聴き,争点等を整理し,必要な資料の提出を求める等していきます。
調停は,一方の言い分が正しいかを決めるものではありません。調停委員には,双方の気持ち,言い分をよく聴きつつ,当事者が紛争の実情に合った解決策に辿りつけるように,仲介していく役割があります。
◎ 調停委員とはどんな人?
調停委員が,紛争を抱えた当事者双方に中立公平でなければ,当事者の信頼を得られず,調停が十分に機能しなくなってしまいます。
調停委員にはその役割を十分果たし,中立性公平性を旨とする人でなければ務まりません。そこで,調停委員は,社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。原則として40歳以上70歳未満の人で,地域社会で活動してきた人のほか,弁護士,大学教授等の専門家などから選ばれています(民事調停員及び家事調停委員規則1条参照)。
任期は2年です(同規則3条)。このような一般委員のほかに税理士や不動産鑑定士などの専門委員がいます。
調停委員は,非常勤の裁判所職員で,担当した調停事件につき手当等が支給されます(家事審判法22条の2・22条の3,家事事件手続法249条)。
◎ 調停委員の注意点
離婚などの家事調停事件は,仕事,学業,親族関係から性生活までプライバシーにかかる事柄が関係します。調停委員は,当事者のプライバシーや秘密にしたい事柄を知ることになりますが,こうしたことをうっかり第三者に漏らしてしまうようなことがあったら,当事者は調停で安心して話し合いを進められません。ですから,調停委員には,守秘義務が課されており,調停委員が正当な理由なく,職務上知り得た秘密を他に漏らしたときは,刑罰(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が科されることになっています(家事審判法31条,家事事件手続法292条)。調停委員が調停事件につき作成したメモ(手控え)は,裁判所外に持ち出さないような扱いになっているようです。秘密を守るため,メモ等の徹底管理をお願いしたいですね。
また,当事者双方から信頼を得るためには,調停委員が中立公平である必要があります。ですから,双方と話す時間等もなるべく同じ時間(30分ずつなど)にするのが望ましいとされていますが,実際にはなかなか徹底するのが難しいようです。長い時間話せたからといって有利とはならず,むしろ調停委員を困らせているだけのことが多いでしょう。しかし,長い時間待合室で待っている方としては,自分が軽視されているのでは,不当な扱いを受けているのではとヤキモキするのも,人情としてわかります。私が代理人として待っているときは,60分までは何とか耐えますが,それを過ぎたら,書記官に遠慮なく,「調停委員に一方に時間をかけ過ぎだと注意していただきたい」と伝えます。そうすると,さすがに他方からの聴取をとりあえず終わらせてくれるものです。調停委員も他方当事者の話を長時間聴かされて,疲労の色が強く,「お疲れ様です…」と内心ねぎらいたくなることも多いです。
調停委員も人それぞれ,様々な価値観を持っているでしょうが,当事者の感覚や価値観を尊重するように努めねばなりません。残念なことに,夫から暴力をふるわれた経験を話しても,調停委員から,「そんなことはたいしたことない。あなたに,こらえ性がないのでは。」といった発言をされた経験を当事者から聴いたことは,何度もあります。調停委員がDVを容認したり,「家事は妻がするのが当たり前」といった性別役割分業を当然と考えたりしていては困りますよね。ジェンダー中立の視点を持って欲しいと考えます。よく勉強している調停委員のほうが多いと思いますが,自分の価値観や考えを自己点検してそれを押しつけないようにしてほしいものです。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
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