エッセイ

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調停で何を決めることが出来るか。その効果は?【打越さく良の離婚ガイド】NO.2-4(13)

2012.09.18 Tue

【打越さく良の離婚ガイド】NO.2-4(13)   調停で何を決めることが出来るか。その効果は?

13 夫と離婚するにあたり,話し合いがつかないので,調停を申立てようと思います。

子どももいるので,親権や養育費についても決めたいです。結婚後買った自宅不動産についてもどうするか相談したいです。

◎ 離婚だけでなく全体的な解決を

離婚を求めて調停の申立てをする場合,離婚それ自体だけでなく,未成年の子どもの親権者や,養育費,親権者でなくなる親と子どもとの面会交流についても検討して合意することができます。財産分与,慰謝料(調停のときは「解決金」とすることが多いです),年金分割についてもあわせて決めることができます。

 親権は離婚時に決めなくてはなりませんが,養育費,面会交流,財産分与,慰謝料について,決めないままでも離婚はできます(後々トラブルになることもありますので,あわてて離婚するよりも,全体的に解決することをお勧めします)。その場合,離婚後に,養育費等について調停を申立てることもできます。離婚後,親権者を変更すべき事態となった場合,親権者変更の調停を申立てることもできます。

 すでに別居している場合,収入の乏しい側が,他方に対し,婚姻費用の分担を求める調停を申立てることもできます。婚姻費用の分担は離婚調停の申立てとは別に申立てることになりますが,併合され,同一の期日に指定されます。

 それでは,いろいろなことを決めた後,どのような効果があるでしょうか。

◎ 離 婚

離婚する調停が成立するとその時点で離婚したことになります。日本には結婚等の身分関係を明確に証する文書として戸籍があります。離婚の場合も,戸籍に記載される必要があります。そこで,離婚調停が成立した場合には,市区町村に届出する必要があります。

 調停の申立人が調停の成立後,10日以内に,調停調書(謄本)を持参の上,市区町村に届出ます(戸籍法77条1項,63条1項)。あるいは,相手方のほうが氏を改める場合など,相手方が届け出たほうが便利な場合,合意すれば相手方が届出ることもあります。

 さらに,成立後,10日以内に届出をしないときは,相手方が届出ることができます(戸籍法63条2項)。期間内に届出をしないと,5万円の過料に処せられます(戸籍法135条)。ただし,年末に調停が成立して,すぐに年末年始のお休みになってしまった場合など,調停調書の作成自体が遅れてしまうことがあります。そのような場合,市区町村の窓口にて事情を話せば,「正当な理由」(同法同条)があるとして,過料の制裁は免れるでしょう。

◎ 養育費・婚姻費用

養育費や婚姻費用の調停が成立したのに,支払ってもらえない場合,強制執行することができます(地方裁判所に申立てます)。養育費,婚姻費用にかかる債権は,一般債権の差押えの場合に比べて,差押え可能な範囲が拡大されています。すなわち,一般債権については,給料等の手取り額のうち4分の3が差押え禁止ですが,養育費等については,2分の1までが差押え禁止となっています(民事執行法152条1項,3項)。

また,一般の債権は,支払いの期限が到来していないと,強制執行することはできません。しかし,婚姻費用や養育費員ついては,期限が到来していなくても,不履行があれば,期限が到来していない債権についても差押えすることが出来ます(民事執行法151条の2)。たとえば,8月末期限の養育費を払ってくれないとして,9月はじめに強制執行を申し立てた場合にはまだ9月末の養育費の期限にはなっていませんが,9月末になれば,9月の養育費分の金額も差し押さえることができます(別途申立ては不要です)。

支払われていない場合,強制執行の前に,まずは家庭裁判所に,履行の勧告を申し出ることもできます。家庭裁判所から,先方に連絡して,履行の勧告をしてもらえます。書面を提出してもいいですが,電話でもできます。費用も不要です。

◎ 財産分与・慰謝料

調停で財産分与や慰謝料(解決金)に合意しても,その通りに守ってもらえない場合,強制執行することができます。

 分割払とせざるを得ない場合,支払いがなされない場合,ただちにその時点の残額を一度に支払うという条項(懈怠条項)を付けておくようにしましょう。この条項をつけ忘れてしまうと,全部の支払い期限が到来するまで,残額全額の強制試行ができないことになってしまいます。金銭債権の場合,支払期日の翌日から年5分の割合による遅延損害金を請求することもできます。

 懈怠条項とは,具体的にはこのような文言です。「相手方が分割金の支払を2回以上怠り,その額が○○万円に達したときは,当然に期限の利益を喪失し,相手方は,申立人に対し,前項の金員から既払分を除いた残金及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を付加して直ちに支払う。」

◎ 年金分割

年金分割につき調停で合意した場合,厚生労働大臣に対し,婚姻期間にかかる被保険者期間の標準報酬改定請求をします。具体的には,調停証書を年金事務所に提出します(その他必要な書類は年金事務所に問い合わせてください)。

◎ 面会交流

面会交流について調停が成立しても,面会交流ができない場合には,まず,履行勧告の申し出をすることができます。

 それでも面会交流ができない場合,間接強制という方法がとられます。強制的に子どもを引きずってきて面会交流をさせるということはできないからです。間接強制とは,義務者に対し調停で定められた義務を一定の時期までに履行することを命令し,これにしたがわない場合には,金銭の支払いを命令するというものです。これにより,義務者に心理的な強制を加え,義務を履行させようという制度です。

カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド

タグ:非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / 弁護士 / フェミニズム,家族,離婚, 打越さく良,エッセイ,離婚ガイド,親権

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