2012.12.18 Tue
【打越さく良の離婚ガイド】NO.2-7(16) 相手が行方不明のときは?
① 夫が行方不明です。離婚したいのですが、どうすればいいでしょうか。
② 夫は「調停を申し立てられても、絶対に裁判所に行かない」と言っていて、調停期日にも出席しません。どうすればいいでしょうか。
◎ 悪意の遺棄として離婚事由にも
相手方が行方不明というと、2、3日というわけではなく相当長いこと行方不明ということでしょうね。そうであれば、「悪意の遺棄」として離婚事由(裁判上離婚の訴えができる事由、民法770条1項)のうちのひとつと認めていただけると思います(同条同項3号)。
そもそも、相手方が行方不明なら、協議することはできませんから、裁判所で手続を行う必要があります。そして、通常、離婚するには、いきなり訴訟を提起するのではなく、調停を経ている必要があります(調停前置主義、家事事件手続法257条、調停前置主義の趣旨は、連載の10回目を参照してくださいね)。でも、行方不明であれば、話し合いは無理ですから、調停をしても意味がありません。そこで、調停の申し立てをしないで、訴訟を提起することができます。
◎ 3年以上生死不明の場合
相手方の生死すら3年以上不明という場合は、民法770条1項3号の「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」にあたるとして、これも調停をしても無意味ですから、調停を経ずに訴訟が提起できます。
なお、3年の起算点は音信消息が最後に途絶えた時点です。
◎ 訴訟提起の方法
では行方不明のときは被告(夫のことです)にどのように訴状副本等を送ったらいいのでしょうか。行方がわからないのだから、送り先がわからない…。困ります。でも、法律でちゃんとそのときのための方法も用意されていますので、ご安心ください。当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合には、裁判所に、公示送達の申立をしましょう(民事訴訟法110条)。具体的には、訴訟提起の際に一緒に公示送達の申立書のほかに、被告の住民票ないし戸籍の附票、そこには被告はいないということを証明する現地についての調査報告書を提出します。申立書の書式は、裁判所のホームページで紹介されているこちらを参考にしてください。
http://www.courts.go.jp/sendai/vcms_lf/204005.pdf
裁判所書記官は、公示送達の申し立てがあった場合には、書類を保管し、いつでも交付することを、裁判所の掲示板に掲示します(同法111条)。掲示開始から2週間(外国に送達すべき場合は6週間)経過した場合、送達の効果が発生します(同法112条)。
送達の効果が発生したら(あるいは発生を見込んで)、第一回期日が指定されます。第一回期日になるべく結審してもらえるように(結審とは、裁判の審理を終結することです)、訴状の段階で全ての証拠や主張を網羅しておきましょう。その後準備書面や証拠を追加すると、また公示送達が必要になり、時間がかかってしまいます。人事訴訟なので、被告が争わず出席もしなくても、原告尋問を実施することが多いです(原告とはあなたのこと)。裁判所に期日の予定を確認して、第一回に原告尋問を実施する予定ということなら、代理人のみならずご本人も出席しましょう。
◎ 調停期日に出席しない場合
行方不明ということでもなく、出席してもらえない場合でも、1,2回は書記官から出席を促す手紙を送る等することもあります。しかし、相手方が出席しない意向が固い場合には、調停を取り下げるなり、不成立にしてもらい、訴訟を提起しましょう。
訴訟で、被告が欠席して、何ら書面等提出しない場合には、裁判所は、被告が争わないものとみなし、原告の請求に基づいて判決を下します。もっとも、財産分与や養育費等は、原告が提出した書証により判断されますので、主張した全額を認められるとは、限りません。ですから、「被告が争わないことになるのだから…」と安心しないで、きちんと証拠を提出しておきましょう。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
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