2013.03.16 Sat
「グッバイ・ファーストラブ」は、タイトルからもわかるとおり初恋の物語であり、そして何より失恋の物語です。
物語の序盤、主人公のカミーユは15歳。アメリカの映画やテレビドラマが大好きな私にとって、ティーンエイジャーの失恋を描いた物語といえば「慰めてくれる女友達」のイメージがつきものでした。一緒に泣いたり笑ったりやけ食いしたり、あらゆるウサ晴らしに付き合ってくれて、「あんなやつとは別れて正解!」そう納得させてくれるのが失恋したとき頼りになる女友達です。
しかし、「グッバイ・ファーストラブ」ではカミーユの友人関係ははっきりとは描かれません。カミーユはぽろぽろと涙を流しながら初恋の人であるシュリヴァンとの別れを思い悩むのですが、彼女をやさしく慰めてくれる友達は現れず、カミーユの母親も「いつまで落ち込んでるの?」とあっさりしたもの。
カミーユにとってシュリヴァンとの別れは相当の痛手だったはずです。しかし、彼女は周囲の人に対して愚痴っぽいことを言いません。髪を短く切り、建築という熱中できるものを見つけたカミーユは初恋の人を失った喪失感を自分の足で乗り越えようとします。その力強い姿はとても魅力的なものです。
とはいえ、この映画は特別に強い女の子の映画だというわけではありません。他の男性と惹かれ合うようになり、新しい人生を順調に歩いて行けそうだと思えたのに、シュリヴァンと再会して心が揺れ動いてしまうカミーユ。とうの昔に別れた男性、しかも初恋の人とまた関係を持ってしまうわけです。
この作品では、そういった恋愛をするときのみっともなさも描かれています。私たちは、誰しもが自分のみっともない部分に何度も出会っていくことで大人になっていくものだと思います。「グッバイ・ファーストラブ」は15歳の女の子が大人へと成長していく物語でもあるのです。
映画は暖かい陽だまりの中にある川をカミーユが泳いでいくシーンで幕を閉じます。人生には自分の力で泳いでいくときもあれば流れに身を任せるときもある。そんなことがこの場面では描かれている気がします。そして、監督であるミア・ハンセン=ラブが映画で表現しようとしている私たちの人生とはこのようなものなのかもしれません。
三木野枝(青山学院大学 総合文化政策学部 3年)
「グッバイ・ファーストラブ」「スカイラブ」「ベルヴィル・トーキョー」
3月30日(土)より、
渋谷シアター・イメージフォーラムにて3作品同時6週間限定ロードショー!
他全国順次公開
カテゴリー:新作映画評・エッセイ
タグ:DV・性暴力・ハラスメント / セクシュアリティ / LGBT / ファッション / ドラマ / 映画 / アート / 恋愛 / DV / フランス映画 / ミア・ハンセン=ラブ / 三木野枝 / 女と映画
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