2013.04.18 Thu
【打越さく良の離婚ガイド】NO.2-1-11(20)
DV加害者と別居したいが、お金がない 20
暴力をふるう夫と離婚したいと思っています。調停を申し立てたいのですが、同居したままだと暴力がエスカレートするのではと心配です。別居したくてもお金がありません。事情があって実家にも頼れません。どうしたらいいでしょうか。
◎ 配偶者暴力支援センターへ相談を
離婚手続に入ったら夫が更にDVをするのでは…。怖くて手続をとれませんよね。大丈夫、まずはお住いの地域にある配偶者暴力支援センターに相談してください。配偶者暴力相談支援センターがどこにあるかは、都道府県、あるいは市区町村に問い合わせましょう。
「配偶者暴力相談支援センター」という名称のところもありますが、「女性相談センター」「男女共同参画センター」「子ども家庭センター」といった名称のところもあります。福祉事務所が配偶者暴力支援センターの機能を果たしているところもあります。まずは、地域の支援センターに行って、相談してみましょう。 支援センターは、あなたのようにDVを受けた被害者と同伴する家族を緊急な場合に一時保護等の援助をすることになっています(DV防止法3条3項3号)。支援センターに相談して、一時保護等の援助を受けましょう。
具体的には、婦人相談所又は一定の基準を満たすとして委託された施設に一時保護されることになります。婦人相談所とはもともと「要保護女子」(売春を行うおそれのある女子)の「早期発見、転落の未然防止及び保護更生」のための業務を行うところですが(売春防止法34条1項)、DV防止法により支援センターとしてDV被害者の支援機能も付与されてもいます。
◎ 一時保護の間に転居先や仕事先の目途を
一時保護では、利用料は不要ですが、あくまでも緊急時のニーズに応えるものですから、滞在できるのは、2週間から1か月間程度。DV被害者である入居者が加害者から所在を突き止められることなく、安全確保を徹底するため、外部との連絡は厳しく制限されます。携帯電話の利用も禁止です。また、学齢期の子どもと一緒に入所した場合でも、一時保護中は子どもは学校に通学できません。
安全は確保できるとはいえ、諸々不便でもありますから、早々に転居先や仕事先を確保し、転居して、今後の生活の目途がつけられるといいですね。 一時保護施設から出た後の住居についても、支援センターに相談するとよいでしょう。母子生活支援施設や婦人保護施設は、DV被害者も対象としていますし、公営住宅には、DV被害者につき優先入居の取り扱いを図ることになっています。
支援センターに最寄りの公営住宅等についての情報を提供してもらいましょう。なお、婦人保護施設とは、売春防止法第36条により都道府県が設置する「要保護女子」(売春を行うおそれのある女子)を収容保護する施設ですが、現在では、DV被害者のほか、生活の困窮などの問題を抱えている女性も保護の対象としています.
◎ 捜索願
夫から警察に捜索願が出されてしまうと、折角避難しても、所在が発覚しかねません。警察庁は、DV加害者から捜索願が提出される段階で、被害者がDVを理由に家を出ている場合には、捜索願を受理せず、また、受理した後で、DV加害者から出されたと判明した場合には、被害者の意思に従い、その生存のみを連絡するなど、被害者の立場に立って、適切な措置を講ずることになっています(2001年7月9日警察津丙生企36号ほか「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の施行に当たっての配偶者からの暴力事案への適切な対応について」)。
さらに、保護命令が発令された案件の捜索願は受理されないことになっています(2001年9月27日警察庁丙生企50号ほか「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律に基づく保護命令に係る適切な対応等について(通達)」)。 捜索願が受理されないよう、管轄の警察に前もって事情を説明し、相談しておくとよいでしょう。
◎ 住民票
DV被害者の住民票については、交付制限の支援措置が受けられます。交付制限の支援措置というのは、被害者の申し出により、その住民票の閲覧や写しの交付に関して、加害者及びその代理人からの請求を受け付けないというものです。支援措置の期間は1年で、延長が必要な場合は、期間終了前に延長の申し出を行います。
転居先が決まったら、住民票上の住所を移動し、支援措置の申し出をする…とトントンと進めてよいか、慎重に考えてください。支援措置がとられていても、第三者からの請求等によって、住所が加害者に伝わってしまうことが何件も報告されています。生活の不便と、避難先の秘匿の徹底を天秤にかけて、住民票上の住所を移動するかを決めましょう。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
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