2013.05.18 Sat
【打越さく良の離婚ガイド】NO.2-12(21) 21 DV加害者と会わないで調停ができるか
調停を申し立てたいのですが、DVの夫と絶対に会いたくありません。家庭裁判所にどんな配慮をしてもらえますか。裁判所に行かなくてはならないときに、弁護士以外の人に付き添ってもらうことは可能でしょうか。
◎ 呼び出し時間など
裁判所でばったり遭遇したり、避難していて住所を加害者に隠したいのに調停後に追跡されたりするのは、避けたいですね。東京家庭裁判所の場合は、調停の申立てにあたって、進行に関する照会回答書(相手方には開示されません)も提出することになっています。
この照会回答書の中に、DVの有無等を回答する欄がありますので、記載しましょう。それから、相手方に遭遇したり追跡されたりすると危険がある場合には、その懸念と、呼び出し時間をずらしてほしい、自分が先に終了し帰宅できるようにしてほしい、待合室の階を別にしてほしいといったことを記載しておくとよいでしょう。東京家庭裁判所以外では、必ずしも照会回答書の記載と提出を求めていないところもありますが、その場合には申立てにあたって要望を書いた付箋をつけておく等、工夫しましょう。
2013年1月から施行されている家事事件手続法のもと、申立書副本が相手方に送られる扱いになっていますので、申立書に要望を書いてしまうと、そのことが相手方に知られてしまいます。そうすると、折角呼び出し時間をずらしてもらっても、相手方も察知して、早めに待っていることになりかねません。申立書には書かないようにしましょう。 裁判所から期日の打ち合わせの連絡があったら、そのときにもDVの危険を説明し、重ねて時差呼び出し等の要望しておきましょう。
◎ 立会調停を避ける
東京家庭裁判所等で、立会調停(家庭裁判所によって若干呼び方が違うようです。)が実施されていす。調停期日のはじめと終わりに,双方当事者本人が調停室に立ち会った上で,裁判所から,手続の説明,進行予定や次回までの課題の確認等,あるいは,成立不成立等により事件が終了する際の意思確認を行うというものです。これは、家事事件手続法の趣旨のひとつである,調停手続の透明性の確保の観点から,主体的な合意形成の前提となる,手続の進行や対立点,他の当事者が提出した資料の内容等について,両当事者と裁判所が共通の認識を持つようにして、主体的な合意形成を促していくための取り組みです。あくまでも、手続の説明や課題の確認等に留まり、同席の上話し合いをしていくことまでは予定されていません。
代理人がついていても、裁判所としては、代理人だけが立ち会うのではなく、本人も立ち会うこととしています。 今までの離婚の本には、調停では他方と会うことはない、と記載されているものが多いことから、いきなり立会を求められたら、びっくりしますよね。でも、別席だけで進められていくと、説明等の時間がかなりかかりますし、「ここまでは合意できた、次回までの宿題はこうだ」という認識を相手方代理人に確認したら、「そんなことではなかった」などと食い違いがあって、混乱、消耗することがありました。そういった混乱消耗があると、調停はなかなか円滑には進まず、解決が遠のきます。立会調停により混乱を避け、早期解決に向かえると良いと思います。
とはいえ、どんな当事者にも、立会調停の意義が大きいわけではありません。DVがある場合、狭い調停室に同席することだけで、恐怖心を覚え、話し合いに冷静に望むことができなくなることもあるでしょう。DVのためPTSD等になっている場合には、症状が悪化してしまうでしょう。調停委員の前でも、実際に暴力をふるわれる危険もあるかもしれません。
そんなケースまで、立会調停をすべきではありません。裁判所も、もちろん、DV事案にまで一律に実施することは予定していません。 立会調停に支障がある場合、進行に関する照会回答書に、その事情を記載しておきましょう。
◎ 弁護士以外の付き添い
行き帰り等の安全安心の確保のために、付添いをしてもらえるといいですね。親戚や被害者支援団体の方に一緒に裁判所に行ってもらう人も少なくありません。ただ、調停室には、代理人弁護士以外の同席は遠慮するようにいわれます。それでも、待合室にいてもらえるだけでも、心強いことでしょう。
市区町村によっては、DV被害者の裁判所等への同行支援事業を行っているところもあります。お住まい、あるいは避難先の市区町村に、同行支援事業をやっていないか、問い合わせてみてください。代表の電話番号をかけて、DV被害者支援担当の部署に転送をお願いすると、「男女共同参画課」等の名称の担当部署に回してくれるはずです。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
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