2013.10.18 Fri
【打越さく良の離婚ガイド】NO.3-1(26) 26 審判と調停と訴訟の違い
離婚したいのですが調停では話し合いがつきませんでした。別居中の生活費(婚姻費用)のことでも調停を申立てていましたが、それも成立しませんでした。「離婚するならあとは訴訟を提起してください。婚姻費用は審判へ移行します。」と調停委員から言われましたが、審判と訴訟って調停とどう違うのでしょう?審判と訴訟もどう違うのでしょう?
この連載の第1回「離婚の方法」で、協議離婚、調停離婚、審判離婚、判決離婚・和解離婚の違いを説明しました。審判は離婚よりも婚姻費用などで利用することが多いです。訴訟は離婚のこと、審判は婚姻費用や面会交流等を念頭に読んでいただけたらと思います。 ◎ 調停と訴訟の違い 当事者間の話し合いで離婚の合意ができないときは、裁判所の手続で離婚することになります。離婚事件は「人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件」ですので、家庭裁判所の家事調停で解決を図ります(家事事件手続法257条)。離婚訴訟を提起する前にはまず家庭裁判所に調停を申し立てなければなりません(調停前置主義、家事事件手続法257条1項。調停前置主義については、連載の1回と2回を参照してください)。
ところで、離婚したいときになぜ一足飛びに訴訟で決着をつけられず、まずは調停を申し立てなければならないのでしょう?それがわかれば、調停と訴訟の違いがみえてきます。 訴訟は、裁判所による紛争の最終的解決制度です。すなわち、国が厳格な手続のもとで法律による権利義務関係を判断する制度であり、一刀両断的な結論にならざるを得ません。「お金を貸したから返せ」というようなことだと、金を貸した事実があるか、返す義務があるか…一刀両断の判断でいい問題です。でも、夫婦関係では、法律的なところだけで一刀両断できない諸々の問題がありがちで、かつ子どもがいると、その後も子の親としての関係は続くというように、長期的な見通しももって解決を考えた方がいいでしょう。
しこりも出来るだけ深くならないほうがよく、本当の解決には当事者の納得がとても大切です。でも、当事者の「自主的」解決を図るということが、「なあなあ」な解決を許し、DV被害者など弱者が泣き寝入りするようなことは許すべきではありません。 中立的な調停委員会が法的観点も踏まえつつ関与する調停は、訴訟ほど厳格な手続きではないけれども、弱者が泣き寝入りをしなくてすむような紛争解決の手続といえるでしょう。
このような調停は、離婚等の事件をまず解決するに適切ということで、訴訟に先だってまずは調停を、ということになっています。 でも、調停で合意ができず、それでも離婚をしたければ、訴訟を提起することになります。訴訟では、通常の民事訴訟と同様、原告・被告が争点について証拠に基づいて主張していくことになります(ただし、親権などが争点になる場合には、裁判所が子の意向を調査するなど、当事者の主張立証とは別に調査もして判断するのが通常です)。
◎ 審判と調停、訴訟との違い
審判離婚というのはあまり件数がないですが、婚姻費用や面会交流などでは調停が成立しなければ審判に移行します。 審判は、当事者による合意を目指す調停とは違い、裁判官が事実の調査を経て判断を下します。事実の調査とは、当事者の主張立証によらず、裁判所が判断に必要な事実を調査することです。しかし、家事事件の迅速で公正な判断のためには、実際には、当事者が積極的に自分の言い分を主張したり、資料を提出したりすることが必要です。そこで、今年1月施行の家事事件手続法(2条)は、当事者も信義に従って誠実に手続を遂行するとしています。相手方としても申立人としても、家庭裁判所にお任せというわけにはいかず、積極的に資料を提出し主張をしていくことが求められます。 なお、調停から審判に移行する場合、新たに申立書を提出する必要はありません。また、調停時に提出した資料や書面を家庭裁判所が事実の調査の対象とした場合、新たに提出する必要はありません。調停不成立で訴訟提起となった場合には、そのように記録が引き継がれるわけではありません。新たに訴状などの主張書面と証拠を提出する必要があります。
◎ 弁護士に相談を
当事者間の柔軟な話し合いによる合意を目指す調停ならば、代理人を就けないで進める方も多いと思います。しかし、資料や証拠を提出し、法律的な主張をして、裁判所の判断を求める審判や訴訟の段階では、弁護士に代理人になってもらうほうが、安心かもしれません。代理人についてもらわなくても、腑に落ちないところ、心配なところは、法律相談で確認しておくと良いでしょう。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
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