2014.01.18 Sat
【打越さく良の離婚ガイド】NO.3-4(29)29 審判はどのように進むのか
審判はどのように進むのですか。訴訟や調停とはどう違うのですか。
◎ 当事者の陳述聴取
家庭裁判所は、婚姻費用や養育費、面会交流など別表第2の事件の手続においては、申立てが不適法であるとき等を除き、当事者の陳述を聴かなければなりません。
また、陳述聴取は、当事者の申出があるときは、審問の期日において行われなければなりません(家事事件手続法68条)。審問とは、裁判官が裁判所で当事者等から陳述を聴取することで、書面照会などより、裁判官の心証に与える影響が強いといわれています。ですから、自分の陳述について裁判所にしっかりと認識してもらいたいときは、審問期日での聴取を申し出ると良いでしょう。
もっとも、年金分割事件では、実質的な審理の対象は、保険料納付に対する夫婦の寄与が同等でないとすべき特別の事情があるか否かに尽きます。この特別事情はあえて審問までする必要もなく、家事事件手続法の施行前から、書面照会で済んでいたようです。そこで、年金分割事件では、審問の申し出は認められず(家事事件手続法233条3項)、原則として、書面照会による陳述聴取がなされます。
◎ 調停、訴訟との違い
当事者の陳述聴取は、事実の調査のひとつ。 さて、調停で、協議し合意の内容を決めていくのは、当事者です。
裁判所は、サポートするのみ。これに対し、審判では、裁判所が事実の調査をして、審判という形で判断します。また、離婚などの人事訴訟では、一般の民事事件と異なり、子どものことなど長期的な影響もあるので、当事者の主張立証だけによらず、裁判官も後見的に調査し判断する必要があり、職権探知主義も妥当します(人事訴訟法20条)。
そこで、裁判所が証拠を収集する事実の調査もしますが、主として、当事者が主張立証していきます。 これに対し、審判では、証拠調べもありますが、主として、事実の調査をもとに、なされます。
◎ 具体的な聴取の方法
調停を先行させず審判を直接申し立てる場合よりも、調停をまず申し立てたけれども不成立になり、審判に移行する場合が多いようです。調停が先行した場合の審判手続において、当事者の陳述はどのように聴取されるのでしょうか。大体以下のように考えられています。
①調停事件が不成立により審判に移行した際、改めて審判期日が指定され、審判期日において、審問され陳述を聴取される。
②審判期日は開かれずに、当事者双方に陳述聴取書が送付され、これに回答して、返答する方法で陳述を聴取される。
③調停期日に当事者双方が出席している場合、調停不成立となった後、直ちに審問期日が開かれて、審問され陳述を聴取される。
どの方法が採られるかは具体的な事案によるでしょうが、事件類型に応じて、一定の傾向が出てくることでしょう。たとえば、婚姻費用や養育費の事件は、申立人の生活に必要な金銭の支払いを求めるものですから、迅速に決めてもらう必要があります。また、実務上、双方の収入資料をもとに算定する扱いが定着しています。そこで、調停期日に双方当事者が出席し、かつ、双方の収入資料が提出され、当事者の主張もほぼ尽くされているのであれば、③の方法が望ましいことでしょう。
一方、親権者変更や面会交流については、調停不成立となっても、審判にあたっては、当事者の陳述が聴取され、事案の諸々の考慮要素が十分検討される必要があるでしょう。そこで、こういった場合には、審問によって陳述が聴取されることでしょう。申し出をしなくても、家庭裁判所は①の方法を採ると思われますが、当事者からも申し出をしたほうがいいでしょう。 また、遺産分割事件や財産分与事件は、一般的には、婚姻費用、養育費ほどには迅速に決めなければいけないということもないです。また、対象財産の範囲の確定や評価等に関する争点が多岐にわたることが多いです。そこで、審判移行後あらためて、当事者が説明をし、主張等の整理をすることが必要でしょう。このような事件類型でも、①の方法が適することが多いでしょう。 ②については、上記の通り、年金分割事件、さらに、婚姻費用や養育費で①の方法が採れない場合などに適することでしょう。
◎ 審問期日の立会いの例外
ところで、審問期日で当事者の陳述を聴取するという方法で事実の調査がされるときは、他の当事者は、事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときを除き、当該期日に立ち会うことができます(家事事件手続法69条)。 立ち会うことで、反論等ができますから、当事者に対する手続保障の規定のひとつです。ただし、DV事案では、被害者は加害者が同席すると怯えてしまい、きちんと主張や供述等をすることができなくなってしまうでしょう。そうした場合には、「事実の調査に支障を生ずるおそれがある」と、裁判所に伝えましょう。裁判所が例外的な場合にあたると認めると、他方の当事者は立会いできません。 もっとも、他方の当事者本人の立会いが認められない例外的な場合であっても、加害者に代理人がついている場合(審判の場合も、調停と同様、代理人をつけない人も少なくありません)、加害者の代理人まで立会いを拒否しなければならない事態というのは、ほとんど考えられません。手続保障の観点からして、せめて代理人の立会いは認められるべきでしょう。
◎ 審理の終結、審判
家事事件手続法(2013年1月施行)の前までは、審理の終結という概念がありませんでした。そこで、一体いつまで資料を出したらいいのか、わからないところがあり、大分後になって相手方が資料を出してくると、慌てるといったこともありました。家事事件手続法のもと、別表第2事件の審判については、家庭裁判所は、相当の猶予期間をおいて審理を終結する日を定めなければいけません(71条)。当事者双方が立ち会うことのできる期日においては、直ちに審理を終結する旨の宣言をすることができます(71条ただし書)。当事者としては、その日までに資料を提出すべきということが明確になりました。 また、家事事件手続法以前は、一体いつ審判が出るのかもわからず、婚姻費用の分担など、迅速を要する事案でもなかなか出してもらえず、率直に言ってイライラしたこともあります。家事事件手続法は、審理を終結したときは、審判とする日を定めなければならないとしました(72条)。審判をする日が定められることによって、目途がつくと、安心できますね。 審判は、相当と認める方法で告知すれば足り(法74条1項)、審問期日での言渡しは必要ではありません(民事裁判と違います)。ですから、日にちだけ指定され、民事裁判と違い、時間までは指定されません。ただし、審判日は、当事者が裁判所に赴けば審判書を受け取ることができる日ですので、裁判所にその日の朝赴けば、審判書を入手できます。
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