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審判離婚はなぜ少ないのか 【打越さく良の離婚ガイド】NO.3-8(33)33

2014.05.18 Sun

【打越さく良の離婚ガイド】NO.3-8(33)33  審判離婚はなぜ少ないのか

審判離婚をしたというのはあまり聴きません。どうして少ないのでしょうか?

◎ 圧倒的に少ない審判離婚  

家事審判法(2012年12月までに申し立てた調停・審判にはこの法律が適用されます)では、家庭裁判所は、調停委員会の調停が成立しない場合において相当と認めるときは、調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のため離婚、離縁その他必要な審判をすることができる、としていました。

当事者が合意ができないとして調停不成立になったにもかかわらず、なお、「当事者双方の申立の趣旨に反しない限度」といえる審判?それって何?と思いますよね。 実際そのようなケースはあまりなく、年間数十件程度、多いときでも185件(2006年)でした。離婚総数からすると、ほぼ0%です。2012年の割合を抜粋すると、協議離(87.1%)、調停離婚(10.0%)、判決離婚(1.2%)、和解離婚(1.6%)。これらに比べると、ずいぶん少ないですよね。

◎ 家事事件手続法で変わったけれど

家事事件手続法(2013年1月以降に申し立てた調停審判はこの法律が適用されます)では、調停に代わる審判の規定の条文上、家事審判法にあった「当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で」という文言がありません。

裁判所は当事者の申立てに縛られなくなって、ぐんと裁量の幅が広がりました。また、家事審判法(139条1項)では、当事者以外の利害関係人も、調停に代わる審判に異議を申し立てられました。しかし、家事事件手続法は、異議を申し立てられる人を、当事者に限りました(286条1項)。また、異議申立権を放棄できることとしました(286条2項による279条4項の準用)。

なお、婚姻費用等については、調停に代わる審判に服する旨の共同の申出に関する規定も設けられましたが(286条8項)、これは、離婚調停等は対象外で、離婚の場合は、夫と妻が共同で調停に代わる審判に服する旨の申出をすることはできません。離婚離縁については、異議申立権を事実上事前に放棄するに等しい共同の申出の制度を導入してまで、早期に解決するよりも、慎重を期すことにしたと思われます。

実際に、婚姻費用等金額のことならいざ知らず、離婚するかどうか、親権はどうか、といった大事なことを、裁判所にお任せ、というのは、危うい感じがしますよね。それも、判決のように、自分たちで徹底的に証拠を出して主張を尽くしてということもなく、裁判所にお任せ、というのでは、あまりに主体性がありません。実際に、調停で合意できなかったのに、裁判所が判決のように証拠調べをしないまま「えいっ」と出した審判には納得できる、ということも、あまり考えられません。

それで当事者が異議を申し立てると、審判の効力は発生しません。裁判所としたら、どうせ効力が発生しない見込みのものをわざわざ書く気はしないはず。ですから、審判は少なかったのでしょう。 家事事件手続法で諸々変化はあるけれども、審判離婚は今後も少ないように思います。

カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド

タグ:非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / フェミニズム / 女性学 / 離婚 / 弁護士 / 打越さく良 / 審判離婚