エッセイ

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離婚裁判の進み方【打越さく良の離婚ガイド】NO.3-10(35) 

2014.07.18 Fri

【打越さく良の離婚ガイド】

NO.3-10(35) 離婚裁判の進み方

離婚訴訟はどのように進行するのでしょうか。期間や費用も心配です。

◎訴訟はどのように進行するのか

まず、離婚訴訟を提起します。離婚訴訟を提起するには、訴状を管轄の家庭裁判所に提出します。具体的には、夫又は妻の住所(生活の本拠である地。民法21条)などです(民事訴訟法4条2項)。  

第1審である家庭裁判所の訴訟手続は、まず争点は何か、証拠は何かを整理する手続(民事訴訟法168条以下)から始められます。原告(訴訟を提起する人)が主張する離婚原因や親権の帰属、慰謝料、財産分与に対して、被告(訴訟を起こされた相手方)は何を争うのか、原告はそれに対してどの点を反論するのかを整理していきます。原告も被告も自分の主張を裏付ける証拠も提出していきます。

第1回期日では弁論として法廷で原告の訴状陳述、被告の答弁書陳述が行われますが、その後は、争点・証拠の整理や和解に向けた話し合いを、弁論準備として何回か行うことがあります。そして、争点・証拠の整理手続が終わった段階で、和解が難しいようであれば、集中審理として、同一期日に原告・被告の尋問を行います。

尋問を踏まえて、更に和解ができないか、数回弁論準備期日をいれて和解することもあります。しかし、そのような期日をいれることなく、最終準備書面というかたちで双方が主張をさらにまとめて提出し(あるいはもう従前の書面で尽くしているなら提出しない場合も)、終結し、判決となることもあります。

判決となっても、一方ないし双方が不服があれば、高等裁判所に控訴します(控訴状は家庭裁判所に提出するのですが、あて先は高等裁判所)。高等裁判所において和解に至ることもありますが、和解が難しく、判決になることもあります。さらに不服がある場合は、 上告することができますが、上告が認められるのは、憲法違反などに限定されており(民事訴訟法312条)、控訴審の判決が覆ることはほとんどないでしょう。

◎どれくらいのお金がかかる?

訴訟を提起するには、裁判所に印紙や郵券を納める必要があります。配偶者一人を訴える場合(他に、不貞相手に対する慰謝料請求を一緒に訴える場合もあります)、東京家庭裁判所では郵券は6,000円です(各家庭裁判所にお問い合わせください)。

印紙は請求額によります(離婚だけなら13,000円、慰謝料500万円をも求める場合には30,000円など)。それから、弁護士に委任するなら、弁護士費用が必要です。 日弁連及び各弁護士会は、2004年4月1日より報酬基準の規定を廃止していて、弁護士費用の基準は各法律事務所ごとに様々です。

弁護士に依頼する場合は、費用の基準の説明を受けましょう。一定の収入や資産以下であれば、法律扶助が受けられ、通常よりは低廉が費用で弁護士に依頼できます(各地の法テラスにお問い合わせください)。

◎どれくらいの時間がかかる?

さて、訴訟提起後解決するまでの期間はどの程度でしょうか。2012年の1年間で離婚裁判の既済事件の平均審理期間は11.6か月、うち当事者双方が出席し判決まで至った事件は15.9か月です(最高裁判所事務総局家庭局「人事訴訟事件の概況 平成24年1月~12月」 http://www.courts.go.jp/vcms_lf/jinso_gaikyou_h24.pdf#search=’%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E8%A8%B4%E8%A8%9F+%E5%AE%9F%E6%83%85′)。

ただし、これはあくまで平均の数値。離婚以外に親権や養育費、慰謝料、財産分与等たくさん争点がある事案もあれば、争点が少ない事案もあります。もちろん、前者はえんえんと期日を重ねることになり、後者は早々に終わります。原告ないし被告が徹底的に争うつもりなのか、歩み寄るつもりなのかにもよります。

また、控訴したり上告したりしたら、さらに時間がかかります。もっとも、それぞれ、家裁でかかった時間よりは短く決着がつくものです。 離婚したいのであれば(そして調停でも解決しなかったのであれば)、どのみち訴訟を提起するしかありません。時間がかかるのでは…と憂いていても仕方がありません。前進あるのみです!いつかは解決します。

カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド

タグ:非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / フェミニズム / 女性学 / 離婚 / 弁護士 / 打越さく良 / 離婚裁判