2015.01.18 Sun
41 裁判で離婚を認められる場合はどんなときですか(4)--3年以上の生死不明
38回からスタートした民法770条1項の離婚原因、今回は第3号の「3年以上生死不明」を取り上げます。
◎3年以上の生死不明
「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」も離婚原因になります。「生死不明」とは、生存も死亡も確認できない状態をいいます。単なる別居や行方不明・住所不定はあたりません。生死不明になったことについて、配偶者に過失や責任がある場合に限りません。「借金から逃げたらしい」「愛人のもとにいったらしい」、「夫婦喧嘩をした後どこかへ行ってしまった」といった何らかの理由が必要というのではないのです。
生死不明の状態は現在も継続していることが必要です。3年以上生死不明だったけれども、現在は所在がわかっている、というような場合は民法770条1項3号にはあたりません。ただ、過去に理由もなく3年以上行方をくらましていたことは、2号の「悪意の遺棄」あるいは5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められるかもしれません。
3年が始まるのは、その配偶者の生存が確認された最終時点です。自分とは3年以上接触がないけれども、知人がごく最近配偶者から電話を受けた、などの場合には、「3年以上の生死不明」にはあたりません。
なお、生死が7年以上不明で、失踪宣告(民法30条1項)の申立てができるときは、失踪宣告を通して婚姻を解消することができます。これは、離婚ではなく、死亡とみなされる結果(民法31条)としての婚姻解消です。
配偶者が不在である以上、協議離婚や調停離婚、和解離婚はできません。調停前置主義の例外(家事事件手続法257条2項)として、調停を申し立てることなく、訴訟を提起することができます。
管轄裁判所は、配偶者の最後の住所を管轄する家庭裁判所です(人事訴訟法4条1項、民事訴訟法4条1項・2項)。訴状と同時に公示送達の申立書を提出します(民事訴訟法110条ないし113条)。
◎ 公示送達とは?
公示送達、耳慣れないですか。これは、訴状等を相手方に送達する必要があるけれども、相手方の住所が分からないために、送達させることができない場合に、送達したものとする手続です。
具体的には、申立書のほか、相手方の住所地の住民票・戸籍の附票、送達ができないことを証明する現地についての調査報告書、行方不明になった経緯と現在に至るまでの経過についての原告の陳述書等を提出します。裁判所書記官は、書類を保管し、いつでも交付することを、裁判所の掲示板に掲示します。掲示開始から2週間(外国に送達する場合は6週間)経過した場合、送達の効果が発生します。
行方不明で公示送達となった場合に、被告が訴訟の期日に出席することはおよそ考えられないと思います(例外はあるかもしれません)。とはいえ、離婚など人事訴訟は、夫婦や親子などの関係(身分関係)の変動をもたらすものですので、お金の貸し借りなどより真実発見の要請が強いとして、裁判所が当事者の主張をそのまま認めるのではなく、自ら証拠を集め判断することもできます(職権探知主義、人事訴訟法20条)。
原告としては、「被告が争うはずないから」とのんびりしてはいられません。訴訟提起時に主張を裏付けるような証拠(公示送達に添付するものと同様に、住民票等、現地調査の報告書、陳述書等)も提出する必要があります。
◎ 請求が棄却されることも?
ところで、裁判所は、民法770条1項の1号(不貞)、2号(悪意の遺棄)、3号、4号(強度の精神病)がありと認めても、一切の事情を考慮して「婚姻の継続を相当と認めるとき」は、離婚の請求を棄却することができることになっています(民法770条2項)。
原告としては、折角立証できたのに一体どうして、とがっくりすることでしょう。公表裁判例で平成に入ってからのものでも、熟年離婚につき妻からの離婚請求について婚姻を継続し難い重大な事由がありと認めながらこの条項により棄却したものもありますが(名古屋地裁岡崎支部平成3年9月20日判決)、とても珍しいです。少なくとも、数々依頼者の離婚判決を頂戴してきた私でも、経験がありません。
その上、3年以上生死不明が確認された被告となお「婚姻の継続を相当と認めるとき」はおよそ考えられませんよね。本来、2項の適用外としてよいのではないかとの見解もありますが、もっともでしょう。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
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