エッセイ

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離婚するとき子どものことでは何を決めたらいいか 4章 離婚と子ども【打越さく良の離婚ガイド】4-1(44)

2015.04.18 Sat

44 離婚するとき子どものことでは何を決めたらいいか

離婚したいと思っていますが、子どものことでは何を取り決めたらいいでしょうか。

◎  親権者の指定

夫婦に未成年の子どもがいる場合、協議離婚の際に父母のどちらか一方を親権者として定める必要があります(民法765条・819条1項)。

調停では、離婚の合意が出来ても、親権者について合意ができない場合、離婚のみで調停を成立することはなく、調停全体が不成立となります。

裁判上の離婚の場合には裁判所がどちらか一方を親権者として指定します(民法819条2項)。

親権者は一度指定されると、当事者間の話し合いで変更することはできません。改めて親権者の変更の調停または審判を申し立てる必要があります(家事事件手続法39条別表第二・8)。

調停や審判に関する規律を定めた家事事件手続法では、家庭裁判所は、未成年である子がその結果により影響を受ける事件においては、子どもの陳述の聴取、家裁調査官による調査その他の方法により、子どもの年齢及び発達の程度に応じて、その意思を尊重しなければならないとしています(家事事件手続法65条・258条)。

人事訴訟法では、裁判所は親権者指定等について裁判をするに当たり、子どもが15歳以上の場合には、その子どもの陳述を聴かなければならないとされています(人事訴訟法32条4項)。ただ、実際には15歳以上だろうとも子どもに「かくかくしかじかの事情から父ないし母が親権者であってほしい」などと詳細な理由を書かせるとなると、親権者とならない親と子どもの今後の関係に悪影響があると考えられます。ごくシンプルにどちらを親権者として望むか、一文だけ書くことが一般的です。

協議、調停、訴訟のいずれの段階においても、できるだけ子どもの意向を考慮する必要があります。しかし、双方の親から「親権者としてどちらがいいか」と尋ねられても、子どもは困惑するでしょう。一方だと述べれば、他方を裏切ったような気持ちになるでしょう。子どもの気持ちを傷つけないように、子どもの意思を把握し、尊重する…。とても難しいですが、子どものことを一番にした解決を考えてほしいものです。

養育費、面会交流

平成24年4月1日施行の改正後の民法766条1項では、協議離婚時に父母が協議すべき子の監護についての必要な事項の具体例として、面会交流と養育費が明記されました。この改正に伴い、離婚届の届出書の標準様式が改められ、面会交流及び養育費につてのチェック欄が設けられました。このチェックをしていなくても、離婚届は受理されますが、離婚前に子どものために父母間で相談し、取決めをしておきたいものです。

子どもを養育するには、衣食住、教育、医療etc.のため、おカネがかかります。監護親が子どもと一緒に暮らし面倒をみているからといって、養育費全額について負担しなければならないわけではありません。なお、監護権は親権の一部で(民法820条は、親権者が監護を行うこととしています)、親権者が監護親であることが多いですが、監護権と親権を分属するときもあります。監護権は子どもの身の回りの世話をし教育する権利義務です。監護親は、もう一方の親(非監護親)に養育費を請求することができます。養育費は、子どもの成長を経済面で支えるもので、とても大切です。

ところが、全国母子世帯等調査(平成23年度http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-katei/boshi-setai_h23/dl/h23_18.pdf)によれば、養育費の取決めをしている母子世帯の割合は37.7%(前回の平成18年度の38.8%よりも減少)、調査の回答時にも養育費を受給している母子家庭は19.7%(平成18年度は19.0%)に過ぎないのです。

父子世帯の場合は、養育費の取決めをしている割合は73%、調査の回答時にも受給している割合は17%でした。これではとてもひとり親家庭での子どもは大変な状況になっているのではないでしょうか。離婚時にしっかり取決めをして、その後も支払を続けてほしいものです。

面会交流も、虐待などがありそれが子の利益を害するという事情がない限り、子どもの健やかな発達のためには大切といわれています。上記の全国母子世帯等調査http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-katei/boshi-setai_h23/dl/h23_19.pdf)によれば、面会交流の取決めをしている母子世帯の割合は23.4%、父子世帯の割合は68%で、調査の回答時にも実施している母子世帯の割合は27.7%、父子世帯の割合は37.4%です。

離婚は子どもの生活にも影響を及ぼすことから父母は子どものことを念頭にすべき…ということからすると、少ない割合に思えますね。

もっとも、DVなどがあって、対等に協議して取決めをすることなんて到底出来ないこともあるでしょう。そのような場合には法律相談に赴いて、調停などの手続により安全を確保しながら協議が出来ないか、相談してみてください。

カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド

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