エッセイ

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親権・監護権とはなにか 4章 離婚と子ども【打越さく良の離婚ガイド】4-2(45)

2015.05.18 Mon

45 親権・監護権とはなにか

夫が、離婚するなら、親権は譲れない、親権者が自分なら監護権は私にやってもいい、と言っています。親権とか監護権って何ですか。

あるいは、せめて長男だけは親権を譲れない、長女二女は私が親権者でもいい、と言っていますがどう考えたらいいでしょうか。

◎  親権

民法818条1項は、未成年の子は父母の親権に服するとしています。

親権ってなんでしょう?「親」「権」というと何だか親が子に何かを要求できるようなものなのかと思ってしまいます。実際、歴史的にみれば、親権は、家長が家族の財産を管理支配してきたことを基盤にして、父親が子を支配する権利たる父権に由来してはいます。民法818条が未成年子が父母の親権に「服する」と規定していることなどになお支配・被支配の関係の名残が感じられますね。しかし、子どもの権利条約(1989年採択、1994年日本批准)において子どもの権利主体性が確認されたことなどを背景に、現在では、親の子に対する支配権というよりも、子が有する発達する権利を親が援助する責任と理解されるようになっています。

おっと歴史的背景はともかく、一般的には、「親権は、未成年の子を健全な一人前の社会人として育成すべく養育保護する職分であり、そのために親に認められた法的地位」であり、①子の身上監護をする権利義務と②子の財産を管理する権利義務とに分かれるとされていいます。民法上、親権に関して、身上監護権(民法820条)、これに付随する居所指定権(821条)、懲戒権(822条)、職業許可権(823条)が規定される一方、財産管理権・財産的法律行為の代表権(824条)が定められています。うう、難しいでしょうか。子どもの身の回りを世話することや、子どもがどこに住むかを決めること、しつけをすること、アルバイトをしてもいいよと認めてあげること、まあそんなこととの総体だと思ってください。

子どもに対しては義務といっても、たとえば子どもを誘拐した第三者に子どもを返せといえるのは、権利的ともいえますね。

なお、2011年に民法上の用語を「親の職務」「親の配慮」に変更することが検討されたものの、「親権」という用語はそのまま維持されました。しかし、民法820条に「子の利益のために」という文言が付加され、親権は、子を支配するのではなく、子の利益を実現することこそが目的であるということが明確になりました。

◎  監護権

先に書いた通り、身上監護権、これに付随する居所指定権、懲戒権、職業許可権も親権の一部です。

民法766条1項は、父母が離婚する場合は、監護者をその協議で定めること、その場合、子の利益を最も優先して考慮しなければならないとしています。協議では定められないときは、家庭裁判所が監護者を定めます(同条2項)。もっとも、親権と監護権を分属させるのでなければ、あえて親権者と別に監護者を指定することはありません。むしろ、離婚前の共同親権のもとで子どもの監護状況を安定させるために、民法766条1項を類推適用(条文の文言そのままでは適用されない場合でも、条文の趣旨から応用してあてまめること)して、監護者の指定を求めることのほうが多いと思います。

◎  親権と監護権の分属

両親は子どもに共同で親権を行うことになっていますが(民法818条3項)、離婚する場合、一方を親権者と決めなくてはなりません(民法819条1項、5項)。なお、出産時に両親が結婚していない場合、何もしなければ母親が親権者となりますが、協議で父親が親権者になることもできます(同条2項、3項)。家庭裁判所は、親権者を父親(母親)、監護者を母親(父親)とバラバラではなく、どちらか一方を親権者と定めることが多いです。

親権と監護権を分属すること(民法766条1項)については、離婚後も共同して親としての責任を認識させることにつながるという意義を見いだす見解もありますが、裁判所は葛藤の強い当事者間の紛争が維持されかねず、それは子どものためにならないと考えているのか、あまり分属させません。

協議離婚の際に父を親権者とした後も母がずっと子らと同居してきた案件で、母の監護の力に問題はないが、消費者金融に借入したこともある母の金銭管理能力に不安があるとして、親権者の変更は認めないとして、親権者を父、監護者を母と分属させた審判例(横浜家審平21・1・6家月62巻1号106頁)があります。

しかし、妥協的に父を親権者、母を監護者とした調停離婚の後、母が親権者変更を申立てた事案では、親権者と監護者を分属させることは、子の福祉から通常最善ではない、扶養手当や税金、健康保険、母子関係福祉で現実に不利益が生じているなら、なおさら親権者と監護者を一本化すべきであり、他方親権者の父が反対している理由は、「税金、健康保険、母子関係福祉で不利益をこうむっている、他方父が反対している理由は、「氏を家制度の残存としての意識のあらわれとしての面が強く、同居生活上の支障に思いを至さない独断」であるとして、親権者を母に変更した審判例(大阪家審昭和50年1月16日家月27巻11号56頁)もあります。

監護者を別に定めた場合の親権者には、財産管理権・財産的法律行為の代表権(824条)のみが残るといっても、離婚後に協力関係が築けないのであれば、この審判が指摘するように、子どもにとって不利益も生じうるので、慎重に判断したほうが良いでしょう。

 

◎  兄弟姉妹の分離

長男については父、長女については母をそれぞれ親権者とする場合など、兄弟姉妹で親権者を分けることがあります。兄弟姉妹で親権を分属した割合は3.6%とごく少数です(2013年厚労省人口動態統計)。

兄弟姉妹はなるべく別々に暮すのではなく、なるべく同一親権者のもとに置くことを重視する審判例もありますが、子どもの希望や今までどちらが監護してきたかなどの要素がより重視される傾向にあります。

カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド

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