2011.07.22 Fri
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いったいなにに翻弄するのか。近代家族に訪れた危機の言説―「家族は解体の方向に移行するのか」である。はじまりがあれば終わりがある。歴史は繰り返し、私たち人間は相も変わらず、変化の先が未知であることに怯え、慌てふためいてきた。江戸から明治へ、戦前から戦後へ、家族はどのような変貌を遂げたのだろう。
「家」制度は、ひさしく「封建遺制」と考えられてきた。しかし、近年の家族史研究の知見は、「家」が明治民法の制定による明治政府の発明品であることをあきらかにした。
明治政府は、家の倫理が国の倫理に従属するように、「家」制度を人為的につくり上げた。国のことを国家と呼び、国家主義と家族主義を連合して個人主義と対決するものであるというイメージを仕立てていったのだ。
近代家族の形成の背後には、公領域と私領域の分離という秘密があった。国家という公領域は、私領域への依存、家族の搾取を隠蔽する必要があった。家族を神聖不可侵の聖域として構成することは、近代家父長制の「陰謀」であったのだ。
これまでの人生、目隠しされていたことさえ気づかずに彷徨い歩いた覚えのある方なら、もうピンときているであろう。上野さんがこだわりつづけた「近代」と「家族」。「自分の生まれ落ちた時代の謎を解きたい」、「社会学はそこから出発している」と本書は世に出た。
謎解きは、自分にあてられた目隠しに気づかせてくれる。颯爽と歩く人々でいっぱいの社会が時代を変えていく。
堀 紀美子
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