2011.06.30 Thu
『新編 日本のフェミニズム』(岩波書店)全12巻―完結を記念し、フェミニズムの世代間継承を目指す協働プロジェクト「拡がるブックトーク」が全国12女性センターで開催されることになりました。その第一弾として2011年6月12日(日)、静岡市女性会館で井上輝子さんと上野千鶴子さんが、世代を超え、性別を超え、フェミニズムを次世代に手渡すために「表現とメディア」をテーマに語りつくしました。
静岡市女性会館で行われた第一弾は、50人募集のところ174人の応募があり、急遽、定員枠を広げて開催しました。当日は、WANの副理事長渋谷典子さんによる「拡がるBook Talk」についての説明からスタートしました。前半は、1974年に和光大学に日本初の女性学講座を開設して以来、広く女性学・ジェンダー学の研究・教育・実践にかかわり、特に「女性とメディア」研究を専門とする和光大学教授の井上輝子さんが、70年代から現在に至る40年間を振り返りました。井上さんは中学、高校時代を静岡市で過ごした縁にも触れ、会場は一気に和やかな雰囲気に包まれました。
後半は上野千鶴子さんも加わって、70年代にはインスタントラーメンのCM「私作る人、僕食べる人」に対し、性差別だと批判が起こり、賛否両論が沸き起こり話題になったこと。その後、情報発信の過程、送り手と受け手の研究などに進んでいき、ITの発達によって、送り手と受け手の垣根が一気に低くなったことなどを振り返りました。
フロアからの質疑応答では若い世代から積極的に質問が出ました。メディア側の女性の現状についての質問には、会場で取材中の地元新聞の女性記者にもマイクが渡され、全国紙と地方紙の採用実態の違いにまで触れたリアルな話を聞くことができました。
最後に上野千鶴子さんが「この『新編 日本のフェミニズム』とブックトークは、私たちのバトンです。受け取る人がいないと落ちてしまいます」と締めくくられ、会場からの大きな拍手で終了しました。
■アンケートから■
・メディアの中で扱われるジェンダーについてはずっと関心があったので、先生方のお話を直接お聞きできて良かったです。(女性 20代以下 駿河区)
・トークは楽しいですね。ライブのスリル感と今この時だけというお得感を堪能しました。ありがとうございました。(女性 50代 名古屋市)
・先生方との距離が近く、とてもよかったです。2人の先生方の掛け合いのお話がおもしろかったし、井上先生の本の説明も興味深かったです。記者の 方のお話も聞けて良かったです。(女性 20代以下 掛川市)
・私にとっては少し難しいお話でしたが、なかなか楽しかったです。これからの人生、女性としてどう生きていくか、いろいろな考えがありました。(女性 20代以下 葵区)
・井上先生の概論にヒントが多く、勉強の手掛かりになります。(女性 30代 駿河区)
・切れ味もよし、ユーモアも交えて、かつユニークな視点から話が伺えた。(男性 60代以上 葵区)
・井上先生、上野先生が今は良い時代になったと言えば言うほど、今の時代にアクションを起こそうとしている若い女性たちのアクションが、周りから冷めた目で見られてしまうリスクが高まると思います。今、私の周りでは「良い時代になったのにまだうるさいことを言うのか」という目で見られることが多い気がします。バトンは受けとって活動していきたいと思いますが…。(女性 20代以下 刈谷市)
・井上先生と上野先生の女性学に対する情熱が伝わってきました。今後のメディアの変化がとても気になります。(女性 20代以下 葵区)
・Book Talkから話の流れがイキイキしてきたように感じました。メディアの中での女性比率の議論がありましたが、組織の中での女性の育てられ方、仕事の与えられ方もまた注目すべき点なのではと感じました(自分の体験も含め)。(女性 30代 清水区)
・とても興味のそそられる本や映画、論文が紹介されたので、今後読んでみようと思いました。『表現とメディア』を読んでから参加したら、もっと楽しめたなぁと、少し後悔しました。メディアに関わる職業の女性問題の話はとても興味をそそられました。(女性 20代以下 清水区)
・ブックトークに参加して、井上先生と上野先生のお話が聞けてとても良かったと思います。事前に本を読んでくれば良かったと強く感じました。留学生の自分にとっては、少し難しい部分もありましたが、日本の女性の社会的地位の変化などについて知識が増えました。これからテレビや雑誌などを読む時には、ジェンダーの視点から注目してみたいと思いました。(学生)
松下光恵(フォーラムしずおか)
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