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朝日カルチャーセンター★受講生レポートNO.21】「日本のフェミニズム」

2012.04.07 Sat

朝日カルチャーセンター★受講生レポートNO.21】「日本のフェミニズム」

★日本のフェミニズム:第7回/「私とフェミニズムの間」★2012/3/24 上野千鶴子先生・江原由美子先生

≪シリーズ日本のフェミニズム~最終特別講義_編者と語るフェミニズム・私とフェミニズムの間≫

「今日はみなさんに二つの問いをもってきました」と上野先生。

ひとつめの問いは、どういうきっかけでフェミニストになったのですか。ふたつめは、フェミニストになってソンですか、トクですか。

以上二点について、上野・江原両先生、そして会場からの体験談を募りつつ講義は進みました。

上野先生によれば、女性が「フェミニスト」になるきっかけには四タイプあるのだそう。

①【ルサンチマン派】。「女ゆえの差別」を経験したウラミからフェミニズムに目覚めたタイプ。亭主関白な父とそれに仕える母や、学生運動で若い同輩男性のマチスモに辟易して、「女の人生の息苦しさ」を悟った、という上野先生がそれに該当するとのこと。

②【構造派】。ジェンダーの構造にうまく適応して、何の疑問もなく「普通の人生」を送ってたのに、あるとき「普通」がクラッシュ。で、フェミニズムに目覚めたタイプ。こちらの代表は江原先生。フツウに進学しフツウに結婚し、単なる研究対象として女性運動を扱いつつフツウに出産したら、障がい児の母親となり、そのとき初めて、単なる研究対象としてではなく、「私もフェミニズムを背負おう」と決意したのだそう。

また会場からの【構造派】として、大学時代の恋人と結婚、順調に子も育った「幸せな家庭」に、次第にDVが蔓延って、…という、これはWAN投稿者・河南柚さんからの発言がありました。(精神的DV被害、裁判で退けられました http://wan.or.jp/reading/?p=1320

③【カルチャーギャップ派】。すごくリベラルな家庭環境や学業環境で育ち、男女平等あたりまえと思って社会にでたら、青くなったタイプ。会場からは、「私は女子校出身で」という発言を…予想したのですが、「うちは、母親のが父より収入が多く、父は家事もよくこなし、だから男女平等アタリマエと思って育った」という若い女性が挙手。予想以上にラディカルな事例(私にはまだ新鮮だった)の出現にびっくりしてしまいました。

④【天然でフェミニスト派】。超めぐまれた環境やずばぬけた才能に恵まれ、自己肯定感を強くもって育ち、「ミソジニー我関せず」と大人になったタイプ。することなすこと自信満々で「フェミニスト」にしか見えない人。でも、どうも朝カルにはこれにピッタリ該当の人は、来てなかったみたいです。「そういう人、どこかにいるんじゃないかなぁ。いたらいいよね。」と上野先生。

以上四タイプ、私はどれかなぁと考えるに、私のフェミニズムのきっかけは摂食障害になったことなので、【ルサンチマン】と【構造】の中間地帯かな、と自己診断しました。つまり、所謂ふつうの女の【構造】から滑り落ちつつ、さりとて【ルサンチマン】にもいまいち自覚的ではない、そんな中間地帯が摂食障害ではないかと。

だけどそういえば、ヒステリーや鬱病に悩んだ女性が草創期のフェミニズムを支えたのだし(フロイトの患者「アンナ・O」とか)、摂食障害や帯状疱疹で自分の不条理な状況に気が付く人、たくさんいるんじゃないかな。中間地帯なんて居心地よくないので、もういっこ【病気派】というのを追加してほしいと思います。

さて二つ目の問い。「フェミニストになってソンか、トクか」。

会場の発言をまとめると、フェミニズムからの知見で日常的な不条理が理路づけられ、気分がスッキリしてくるパターンが多いよう。でも、知れば知るほど「性差別」が目にとまるようになり、まわりじゅうがイヤになることもある様子。

さらに、対外的にも「私はフェミニストだ」と表明した場合、世間から失笑されたり(アカデミズムの世界でも「女性学をやるなんてあの人終わってる」といわれるそう)冷遇されるみたい。その反面、「フェミニスト」として煙たがられたおかげで、面倒くさい男(女)が寄ってこなくてせいせいする、とも。

結局どうも、ソンもトクもどっこいどっこいです。フェミニストである人生とフェミニストでない人生、カレー味のうんことうんこ味のカレー、みたいなかんじ。だって、女がじぶんの都合を優先する「フェミニズム」とは、世間的には確実に「うんこ」にしかみえない「世間にばばを投げつける」ような思想であり、まわりじゅうから「うんこ食ってやがる」といわれ続けます。そしたら、それがどんなに美味しい「カレー」でも、だんだん「うんこ味」を感じてゲンナリしてくることでしょう。反対に、まわりじゅうから「すばらしいカレーだ」といわれ続ければ、実質が「うんこ」であっても(女性の栄養にならず吐き気をもよおすような規範であっても)、「カレー味」を感じてしまうのです。

ここに借用した「うんこカレー問題」とは「究極の選択」の設問です。この設問では一般的に、「味を重要視する人はカレー味のうんこを選び、人間としての尊厳を守りたい人はうんこ味のカレーを選ぶ傾向が見受けられる」とのこと。女がフェミニズムを選ぶときも、それと似ている気がしました。

 

※「WAN上野千鶴子web研究室・上野ゼミ」について。
昨年秋より始まった「上野ゼミ」は、参加者の研究発表とその講評、というゼミ形式で継続していましたが、今年からは、「ゼミ」というより「書評セッション」の形式が中心になるとのこと。
研究についてではなく、すでに出版されている本について、その作者とコメンテーターを招いてのセッションです。「ゼミ」より敷居が低く、誰でも参加しやすくなったかんじ。WAN上野千鶴子web研究室、http://wan.or.jp/ueno/をチェックしてみてください。メールで問い合わせできます。
杵渕里果(受講生)

カテゴリー:拡がるブックトーク2011

タグ:女性運動 / / 上野千鶴子 / 女性差別 / 江原由美子 / 朝日カルチャーセンター / 私とフェミニズムの間 / 受講生レポート

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