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シンポジウム参加者からの感想
2013.07.13 Sat
NPOは女性が活躍する職場になりえるか?
さらに社会を変え、「自己実現の道具」ともなりえるのだろうか? 中村 設子
名古屋市の住民である私が「つながれっとNAGOYA」に関心を持ち、その名の通り、これまで縁がなかった女性たちとつながり(・・・・)ができるようになったのは、今年3月に開催された社会企業家の実践講座に参加してからだ。川北秀人氏(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]を招いて行われたが、そこで私は、日本にはNPOという組織を立ち上げ、社会の隙間というか必要とされている事業を起こしているひとたちがこんなにいるのだ…と、正直、大きな刺激を受けた。
今回、参加した「NPOのチカラ2013―それは「女縁」から、はじまった! 」では、NPOで実際に活躍する女性たちの本音を聴くことができた。1998年にNPO法が施行される以前から、こうした女性たちは血縁、地縁、社縁を超えた「女縁」でつながってきたのだ。この縁を女性たちがどのように自分の人生に取り入れ、活用してきたのか。さらに、今後どのような未来を描いていこうとしているのかを理解し、ともに考える機会となった。
そもそも「女縁」とは、「女縁」とは、血縁、社縁、地縁を超えたところでつながるっている女性たちのネットワークをいう。
そのルーツともいえるのが、ひと時代を創った「ウーマンリブ」であり、そもそも事の始まりは、女性同士の愚痴のこぼしあいからはじまったらしい。いつの時代も、女性は身構えることなく、自分の本音を語り、人間関係をつくってきたのだ。
こうした才能というか、男性とは異なる資質を持つ女性(なかには女性以上に愚痴をこぼす男性もいるので一概にはいえないが…)は、どのような社会的地位にある人間に対しても後ずさりすることなく、相手の懐に飛び込むことができる。
そうした能力を活かし、「女縁」を武器(・・)にNPOを作って成長してきた事実とその成果は、この日、壇上に立って講演した女性たちの話を聴いて実感できた。
壇上の3人の方々は、上野千鶴子さん(「女縁」の研究者、「女性をつなぐ総合情報サイト・ウィメンズ アクション ネットワーク(WAN)」理事長)、石井布紀子さん(NPO法人さくらネット代表理事)、渋谷典子さん(NPO法人参画プラネット代表理事)である。
彼女たちが「女縁」を基盤としてつくりあげたNPOは、いずれも社会の問題を解決し、女性だけに限らず、ひとがより良く生きるための支援であり、実践だ。それは同時に、女性が活躍する場も作ってきたともいえる。
これらのNPOに関わってきたひとたちは、仕事をすることで報酬=労働賃金を得てきたひともいれば、全く無報酬のひともいる。特に先に書いたインターネットのサイトを発信源として活動する「WAN」の場合は、運営すべてに関わる全員がボランティアである。
また労働対価としての報酬を支払っているNPO法人参画プラネット(「名古屋市男女平等参画推進センター つながれっとNAGOYA」の指定管理者を担当)のように、自治体や公的機関から委託されたカタチで仕事を請け負っているNPOも全国には多いはずだ。
だが、上野千鶴子さんが「官というと聞こえがいいが、下請! 年間4500万予算、全部、税金でしょ…」と語っていたように、「官」に頼らないNPOをどのようにつくりあげていくかという問題にも直面している。
「官」から自立できる準備をしながら、なおかつ女性が働ける職場を創出する…。その方法はどこにあるのか。ひとりのチカラでは突破できないこの難題を乗り越えるためには、やはり女性のネットワークが可能性を秘めている。男性に比べ、女性の方が、気づきや行動力、思考に柔軟性があるからだ。
もちろん、女性特有の欠点もあることも事実である。なかなか話の要点をかいつまんで説明できない、余計な話が多く時間がかかる…など、男性から見れば批判されてしまう点だ。だが、こうした一見、無駄に見える時間から、仕事のヒントやアイディアが生まれてくる場合も多く、生産性や効率ばかりを優先している男性とは違う。この点からいえば、現在のような、利益最優先の殺伐とした社会を作ってしまった男性の責任は重い。
自分の仕事、あるいはやりがいのあるボランティアをすることは、ひとりひとりの女性が、自分はどのように生きていきたいのかということだ。「自己実現」というと、いささか大仰に聞こえるかもしれないが、要は幸せに暮らしていくための仕事をどのように獲得するかという難問でもある。
現実問題として、日本社会が女性を充分に活用していないのは、国内のみならず、海外からも指摘されている通りだ。具体的なデータとして、企業の経営者に占める女性の割合や、国会議員の数、要職に就いている女性が男性と比べてどれほど少ないか、証明できるものは山ほどある。
権力を持つ男性は、そのほとんどのひとが、これまで女性が活躍できる場を与えていないばかりか、未だに奪ってしまっているともいえる。だが、なかには志の高い心優しい男性もいるので、彼らを傷つけないためにも、あえてそこは大声でいわずに、私たち女性が自らの行動力でこの壁をぶちやぶらなければならないだろう。ただし、そのためにも男性の理解が不可欠だ。
権力を持つ男性の方々がまず協力してくれなければ、いつまでたってもNPOの資金確保の苦労は絶えず、事業の拡大ははかれない。
「自分の利益を真剣に考えましょう。徹底的に自分を大事にすること。他のひとの利益も追求し、自分の利益を追求しよう」という上野さんのコメントには、その手段としてのNPOの存在を感じさせ、今も私の心に深く響いている。
カテゴリー:NPOのチカラ2013