2009.05.30 Sat
東京にいる密入国者15万人。彼ら異邦人が独自の政府を持った……という設定の物語。政府とはいっても、それはアンダーグラウンドな組織。その組織・異邦都庁に認められ、無事“裏都民”となっても、密入国を日本側から追われることにかわりはない。彼らの多くは、難民認定を受けられず、力を持たない人々である。弱いからこそ“連帯”が必要不可欠となり、その中心に「ユルい」政府が置かれる。主人公の“久保塚”(国籍不明)はそんな政府の中のただ一人の警察官であり、異邦人の間で、異邦人と日本人の間で、起こる問題を手がける。久保塚を中心に物語は進んでいくのだが、彼以外のキャラクターとその描かれ方が魅力的だ。故郷を離れ、不法滞在者となるにいたった理由など、シリアスになりやすいエピソードが、すぎむらのユーモアによって暖かく描かれ、キャラクターの深みがます。所々「ん?」と感じてしまう表現もあるのだが、それを上回る、“したたかな弱き者”への愛情が、この作品のベースになっている。(horry)