弁護士としてDV被害者の事件に取り組んできた経験から、被害者と加害者の認識には大きな齟齬がある、と気づくようになった。加害者は自分のしていることをDVと認識していない。被害者がずっと離婚しようかどうしようか悩んでいたことにも気づきもしない。だから、被害者から離婚を切り出されて、まさに「青天の霹靂」ということが少なくない。被害者は、加害者が全く無自覚であったことを知り、改めてその鈍感さに絶望する。「円満」と思っていた関係が、当の相手には「苦しい、恐怖の関係」になっているかもしれない。「なんと不吉なことを」と思われるかもしれないが、パートナーとの関係を大切にしたいなら、その関係をあらためて振り返ってみてほしい。
相手を束縛したり、痛めつけたりしてはいないか。こんなことに気づいたら、改められるのではないか。もう相手の信頼を失い、手遅れならば、どうやったらまだ円満に解消していけるのだろうか。子どももいるなら子どもへの配慮ももちろん必要。心がけるべきポイントを多々盛り込んだ。養育費や面会交流、財産分与や慰謝料など、裁判例も踏まえて、家裁実務の傾向も把握できるようにし、被害者にも、そして弁護士にも、お役に立てるはずである。
被害者を対象とした本はあっても、あなたがしていることは暴力ではないか、相手を損なうならその関係にピリオドを打つべきではないか、必要な金銭的手当もすべきではないか、と加害者に諭す本はあまりないように思う(不勉強だったら申し訳ない)。
加害者は、自分がしていることをDVと認識しにくい、あるいは、認識したくない。その加害者にこそ手に取って、そして読み切って、腑に落ちてほしい、というのは、ハードルが高い願いかもしれない。しかし、まさにそのことを願っている(著者 打越さく良)。
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