イヌとからすとうずらとペンと 山川菊栄・山川 均写真集

同時代社( 2016-03-08 )

山川菊栄 生誕125周年記念事業(刊行物シリーズ NO.3)

知っている人にはなつかしい二人ですが、知らない人にはなじみのない夫婦です。福島みずほさんと津田大介さんの推薦文があって、井上輝子さんと山崎耕一郎さんのまえがきとあとがきがあって、この写真集を開いてみる心構えができるというしかけです。

巻末についている年表をみると、均さんは1880年生まれ、菊栄さんは1890年生まれで、亡くなったのはそれぞれ1958年と1980年です。明治、大正、昭和の日本を生きたたかったことが分かります。

日本の思想家で夫婦でその全集・著作集が刊行されている例は他にはみません。それぞれ勁草書房と岩波書店から出ています。そしてこの度の、『山川菊栄・山川均写真集』では、二人が一緒に一冊の中にまとまっています。

ここには300余葉の写真・資料が載っていますが、その2割弱が二人か二人が加わった集合写真の類いです。均は若い頃からカメラの趣味があって、機会があればシャッターをおしていたらしく、一人息子の振作を含めた3人での写真をたくさん撮っています。これは3人家族ながら、年中一緒に暮らしていたのがめずらしいため、一緒のときには撮っておかねばという思いがあったように思えます。

同じことは仲間たちとの集合写真にもいえることで、「入獄・出獄記念写真」などは、弾圧と抑圧の時代の産物です。

そしてタイトルについている「イヌとからすとうずらとペンと」です。「弥勒寺動物園」というページにまとめてありますが、とにかくそれらは生活を潤し、生活を支えもした大家族を形成して、山川一家を成している感じです。

写真があって、その写真のための文章があるという組み合せがいくつかあります。

まずはこの写真集を手にされ、二人の生涯に、トータルに接したうえで、その著作にも挑戦して、新たな山川学校に学ぶ方が一人、二人と生まれることに期待したいと思ったところです。
(佐藤礼次記)