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中国映画にみる父親像 藤田嘉代子
2009.08.20 Thu
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<p> 熱田さんのステキなエッセイから中国社会とジェンダーという視点を引き継いで、中国映画の親子関係について書いてみたいと思います。<br /> 中国映画のホームドラマは、主人公かそれに準ずる役どころとして、男性が「父親」としてしばしば登場します。『<a href="http://amazon.co.jp/dp/B000065BHM">山の郵便配達</a>』(監督:フォ・ジェンチイ 1999)は、中国映画の父親作品群としてはイチオシ作品。中国の奥地に点在するいくつもの村落を徒歩で3日かけて郵便配達する父が、退職を機に息子に仕事を引き継がせるお話です。<!–more–>父の最後の職務に同行した息子は、彼がいろんな村で人々に慕われていることを目の当たりにして、この仕事のせいでほとんど家にいなかったのに、父をちゃんと一人の職業人として尊敬するのです!(だれだ日本ではありえない?と言ったのは?!)初めてみた私はかなり異文化ショックを受けたような気がします。</p>
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<p> 『<a href="http://amazon.co.jp/dp/B00009XLKW">北京ヴァイオリン</a>』((監督:チェン・カイコー 2002)や、『<a href="http://amazon.co.jp/dp/B000JUB71M">胡同のひまわり</a>』((監督:チェン・ヤン 2005)は「教育する父」たちが活躍する映画。『北京ヴァイオリン』はその名の通りヴァイオリン、『胡同のひまわり』は絵画で、父親たちが息子を大成させようというお話。どちらも教育する親が「ママ」ではなく、「パパ」で父の存在感たっぷりです。けれど、『胡同のひまわり』では主人公が思春期になって、付き合っている女の子が妊娠してしまいそれを息子の親という権限だけで人工妊娠中絶させてしまうくだりは、中国の親たちの、子どもの将来へのおそろしいまでの思い入れが描かれていて、そんな親の許で暮らす子どもたちの息苦しさには恐れ入りつつも共感しました(とやや脱線)。</p>
<p> 概ね、中国の映画では父子関係が一つの大きなテーマとして成立しているような気がします。ただそれってやっぱり男性中心的ってことじゃないの?!と疑念が感じられるフシもあります(笑)。例えば『胡同のひまわり』のお父さんは息子を指導する、教育的でどちらかといえば高い精神性を持った存在として描かれているけれど、母親の方は胡同(中国の下町ですね)を出て現代的なマンションを手に入れることに固執しそれを手に入れるためにペーパー離婚までする、現世的で物質的な人物として描かれています。いくら女が強くたって、人としての価値はそれほどない、と描かれているような気もしないでもない……</p>
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<p> けれども、比較的最近の作品をチェックすると「いつまにこんなにフェミニズム?!」と、根を詰めない程度に中国映画ウォッチャーであった私も感慨深いものが……。<br /> 『<a href="http://amazon.co.jp/dp/B001GBAEUS">胡同愛歌</a>』(監督アン・ザンジュン 2003)は離婚した、どちらかと言えばうだつのあがらない中年男性が主人公。彼と息子の生活を中心にストーリーが展開しますが、これは男性主体の?ドメスティックバイオレンス話と見るのが最適かと。中国の有名なコメディアンであるファン・エイさん演じる主人公は駐車場の警備員。彼は「成功者」ではないけれどやさしい人物として描かれていて、つきあっている女性がいます。2人がまさに再婚しようとするそのときから物語は始まるのですが、恋人にはギャンブル好きな暴力夫がいて、彼が刑務所から出所してきてほんわかムードは一転。加害男性は妻に暴力をふるうだけでなく主人公たちの生活もメチャメチャにします。主人公の職場で客の車をボコボコにしたり、息子が痛めつけたり。DVによって人々のくらしや人間関係がずたずたにされてしまうということがよくわかります。被害女性自身よりも、彼女をめぐる<男同士の闘い>として描かれているのがちょっと惜しいですが……</p>
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<p> 『<a href="http://amazon.co.jp/dp/B00077D9KE">上海家族</a>』(監督・脚本ポン・シャオレン2002)はまさにフェミのツボをついた作品。上海に暮らす、浮気した夫に愛想をつかして離婚したシングルマザーとその娘が主人公。中国ですから女性も仕事を当然持っているのですが小学校の教員の給料では十分に食べていくことができません。実家に帰っても「離婚して戻ってくるなんて」と母にさげすまれ、仕方なく主人公は生活のために再婚しようとするのですが、新しい夫は週一回しか風呂入らせない吝嗇家で主人公母子は再び家を出ます。実家にもどると弟のフィアンセがすでに嫁風を吹かしており、行き場のなくなった主人公は、自分から別れたはずの子どもの父親からの再婚の申出すら迷ってしまう……ところでクライマックス(と、ネタバレしないでおきます)。上海の目覚しい経済発展のなかでなんとか泳ぎきろうとする人々のたくましい姿とともに、フェミの古典的テーマが描かれているのですが、思えば「中国女性のシンの強さ」とフェミニズムがこれほどマッチした作品もないかと。なんといっても、プアでかわいそうな、シングルマザーとその娘ではなく、ある種の創造的なシスターフッドとして描かれているのがステキ。中国映画からまだまだ目が離せません。</p>
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<p><a href="http://wan.or.jp/book/?p=63" target="_blank">次回「血の繋がらない親子関係」へバトンタッチ・・・・つぎの記事はこちらから</a></p>
カテゴリー:リレー・エッセイ
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