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オトコなんて要らない?! mooty
2009.10.01 Thu
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<p>ミュージカル映画<a href="http://amazon.co.jp/dp/B0026O1JD0">「MAMMA MIA!」</a>の主人公ソフィは、3 人の父親候補の中から本当の父を見つけ出そうとするが、「遺伝子だけの父」なんて会っただけじゃわからない。そのうち、自分の本当の「親」は母だけなのだと気づく。一方、父親候補役の俳優に言わせれば、父親は「モノ同然」の「笑われ役」となる。これを「女性の手によって制作された映画というだけのことはある」と指摘した前回のエッセイからバトンを受け、わたしは「父」=オトコについて考えてみた。<!–more–></p>
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<p>ソフィがそうだったように、もし子どもをつくるための「父」としてのオトコの役割が「遺伝子だけ」だったとしたら……?遺伝子操作や生殖テクノロジーの技術が発展すれば、女が女だけで子どもをつくれるようになり、ひょっとしてオトコは必要なくなる日がくるかもしれない。そんな世界を、科学+エロのミステリー調で描いてみせたのが、乾くるみの<a href="http://amazon.co.jp/dp/4167732033">『Jの神話』</a>だ。<br /> ヒトの身体をかたちづくっている体細胞の中には、23本ずつ対をなした計46本の染色体が含まれている。23組の染色体セットのうち、1組だけ大きさが不揃いのものがある。それが性染色体――X染色体とY染色体だ。一般的に、女性は体細胞の中に2つのX(XX)を、男性はXとYをひとつずつ(XY)もっている。</p>
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<p>ところが、近年の研究によって「XXX」、「X」、「XXY」、「XYY」など、染色体数異常が知られるようになった(山内俊雄<a href="http://amazon.co.jp/dp/4000065742">『性の境界』</a>、加藤秀一<a href="http://amazon.co.jp/dp/4023303739">『ジェンダー入門』</a>)。こうした性染色体数の異常によって、「YY」という組み合わせをもつ生命がうまれたら……(以下ネタばれ注意)。多くの場合、こうした受精卵は育たないで自然流産してしまうのだろうが、<a href="http://amazon.co.jp/dp/4167732033">『Jの神話』</a>は、まさにその受精卵が主役級の役回り。</p>
<p>姿形やその本質がイブを誘惑するヘビにも、イザナギとイザナミの子ヒルコにも似ている<J>。その性染色体の型は、「YY」だ。しかし<J>はひとつの個体として生命を維持することはできないので、寄生する宿主が必要となる。そこで女性の胎内に根づく。<J>は、宿主の卵子を採取し、卵子の染色体を捨てその殻だけを奪い、その殻の中に<J>の染色体を詰める。そうすると胎内には、性染色体がYの卵子(通常、卵子の性染色体はX)が用意される。その後、宿主の女性が男と性交し精子を受ければ、50%の確率で、XY型の受精卵とYY 型の受精卵ができあがる。YY型の受精卵は、新たな宿主が必要となるので、受精卵を<J>のなかに入れて別の女性の子宮に撃ち込む。こうして<J>を宿した「女性」は、両性具有であるだけでなく自ら生殖できるようになる。オトコの手を借りなくても、女が女だけで子どもを作れるのだ。<br class="clearall" /><br /> 実際、遺伝的にオトコを規定しているY染色体は消滅する運命だとする説がある。2009年1月に放映されたNHK総合テレビ『シリーズ女と男』 第3回 「男が消える?人類も消える?」(2009年1月18日放送)で、オーストラリア国立大学教授のジェニファー・グレーブスの説として取り上げられていた。グレーブスらは、2002年に雑誌『ネイチャー』(Nature 415: 963)に発表した論文“The Future of Sex”の中で、Y染色体が将来的に消滅する可能性を指摘している。Y染色体はオトコしかもっていないため、父から息子に遺伝するときに傷つくと、傷ついた遺伝子がそのまま孫息子にも受け継がれる。このサイクルが長い年月くり返され、今では、傷つきまくって小さくなったY染色体しか残ってない。さらに、Y染色体を運ぶ精子も劣化している(ひょっとして草食男子?)。これは、卵子をめぐって精子が競争しなくてもよい一夫一婦制が長く続いたためだという。</p>
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<p>ヒトは体内受精のため、父親の確認が難しい。一夫一婦制をはじめとする婚姻制度は、「父」を確定するために設計されている。素朴に考えれば、母親を確定することは簡単だが、誰がその子どもの父親なのかはとてもあいまいだ。「この子どもは、本当にオレの遺伝子を受け継いでいるのか」。オトコはその不安な気持ちを解消すべく、社会的な基準をつくり親子関係を制度化していった。そしてつくられた婚姻制度のもとでは、婚姻中に妻が懐妊した子は夫の子となる(丸山茂<a href="http://amazon.co.jp/dp/4657052071">『家族のメタファー 竏茶Wェンダー・少子化・社会』</a>)。この制度を確実なものとするためには、婚姻外のセックスは(特に女には厳しく)禁止され、異性愛の関係が特権化されなければならない。ところが、いまでは婚外セックスは当たり前、同性愛者もカムアウトが容易になってきている。きっと、娘の門限に厳しかったり、つき合っている相手との関係を詮索したり、「誰の金で暮らしてるんだ」と怒鳴ったりするわたしの父は、揺らぐ制度の前でちょっと不安になった「父」=オトコなのだろう。<br class="clearall" /><br /> 父権的で抑圧的な制度は、「父」の確定という命題のもとにあるのかもしれない。</p>
<p>参考URL<br /> 女と男?最新科学が読み解く性? 第3回 男が消える?人類も消える?<br /> http://www.nhk.or.jp/special/onair/090118.html<br /> Human spermatozoa: The future of sex R. John Aitken & Jennifer A. Marshall Graves<br /> http://www.nature.com/nature/journal/v415/n6875/full/415963a.html</p>
<p> </p>
<p><a href="http://wan.or.jp/book/?p=91" target="_blank">次回「オトコなんて要らない?! アラサー女子の本棚事情」へバトンタッチ・・・・つぎの記事はこちらから</a></p>
カテゴリー:リレー・エッセイ
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