このタイトルを見て何のことだろうと思いました。その意味を知った時、本当に驚きました。私もドローンがどんどん発達して実用化されていることは知っていました。でもそのドローンが「安全な戦争」の必需品だとは!どんな方法であれ、戦争はやはり殺し合いであることに変わりはありません。
 イギリス、アメリカ、ケニアの司令官たちが、それぞれの国の部屋にいながら、上空6千メートルの空の目(アイ・インザ・スカイ)が捉えた画像を見て、瞬時に意見交換をしています。近頃の日常によくある光景です。しかし、画面には、ケニアにあるテロリストのアジトが映し出され、その部屋の中では自爆装置を巻き付けられている少年や、国際指名手配の英国人女性テロリストが鮮明に映し出されています。
 昆虫や蜂の形をしたドローン撮影機が室内まで入り、部屋の隅々まで遠隔操作で写し出すことができるのです。その映像が米・英の司令官がいるそれぞれの国の部屋に届きます。どんな映像もはっきり映し出せる技術が使われているのでしょう。指名手配中のテロリストの映像確認で本人だと認証までされます。これは最近日本でも犯罪捜査に役立っているというぼんやり映っている映像も鮮明にするという技術が使われているのでしょう。
 ロンドンの諜報機関の将校、パウエル大佐(ヘレン・ミレンが好演)が、対テロの指揮官です。自爆テロの準備が着々と進む室内の様子を見て、一刻も早く爆撃をしなければと焦ります。ところがこの家のすぐ横に、パンを売る女の子がいることに気づきます。その女の子を救うために爆撃を遅らせれば、自爆テロが行われ、すぐにも何十人もの犠牲が出ることは必定です。この少女を救う道はないのか?この小さな犠牲は仕方ないのか?大きなジレンマを抱え、司令官室も困惑します。大臣の意見を仰ぎます。がーーー。最後までドキドキ続きです。
 無人機から発射されるミサイルというのも現在の戦争の当たり前の姿です。オバマ前大統領は、ブッシュが始めた対テロ戦争を引き継ぎましたが、地上軍を大幅に減らし、代わりに無人攻撃機による敵要人の攻撃に切り替えました。2016年7月に「自ら許可をしたドローンによる殺害数は2581人だ」と発表しているそうです。この数字には、戦争状態にあるイラク、アフガにスタン、シリアなどは入っていません。だからもっと実際は多いでしょう。ドローン攻撃による周辺の民間人の被害率は17%と発表されています。アルカイダやISなどによるテロ攻撃では何万人もの人が亡くなり、多くの人が難民となって苦難を強いられています。
 ドローンによるピンポイント攻撃は、爆弾を投下するよりも確かに民間人の被害はうんと少ないのです。しかしやはり殺戮には違いありません。今も何も知らない子供たちが犠牲になっていることを思うと、どんな戦争も1日も早く無くなることを願うばかりです。 戦艦のような巨大なものから極小兵器まで、世界中で兵器が生産され続けている限りは、結局、形を変えても戦争はなくならないのでしょう。戦時中を知っている者としては本当に残念で悲しいことです。
 日本の大学が、「防衛省の軍事研究費」に惑わされないでほしいと願っていましたが、受け入れる大学が多い中、田中優子法政大学学長が毅然として、「武器等の研究・開発の研究委託制度への応募は認めない」といわれたことを知り、心から敬意を表したいと思います。嬉しいニュースでした。(中西豊子記)