
第20回全国シェルターシンポジウム2017in東京の基調講演者として初来日をはたした著者オルガ・トゥルヒーヨさん。
オルガさんは父親から母親へのDVがある家庭で育ち、自らも3歳ごろから父親や兄からの身体的、精神的、性的虐待を受けました。
また、家の外でも度重なる性暴力被害を生きのびてきたおひとりです。
そうした暴力にさらされるたびに自らが細かい「部分(=Parts)」に分かれていき、解離性同一性障害を持つに至る様子や、「部分」の存在に気づき回復する過程が描かれています。
オルガさんは米国弁護士として司法省で犯罪被害者部門の特別プロジェクト部長を務めるなど、被害者支援を構築してきた方でもあり、専門家としての知識と当事者としての経験を最大限生かしたリアルかつ明解な内容です。
解離性同一性障害というと稀なケースと思われる方もいらっしゃると思いますが、性/暴力被害を受けた多くの方が程度の差こそあれ解離という手段を使って生きのびています。また、「暴力被害の結果、心を病んだかわいそうな人」というステレオタイプではなく、「暴力被害を解離というメカニズムを使って生きのびた」という非常にエンパワリングな語りで、解離性同一性障害に対するスティグマに対抗しています。当事者、支援者、また彼/女らの隣人として、読んでおきたい一冊です。
暴力の具体的な描写が含まれるので、フラッシュバックが心配な方は第2部の回復の過程からでも読めるようになっています。
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