「女のくせに」「女はいいよな」「男以上に成功するな」「女なんだから◯◯できて当然」「男の浮気は笑って許せ」「早く結婚しろ」「早く産め」「家事も育児も女の仕事」「若くて可愛いが女の価値」……。
 多くの女性は、小さな頃からそんな「呪いの言葉」を投げかけられてきた。「呪い」は言葉だけでなく、日常のあちこちにも紛れ込んでいる。  例えば、保育園を落ちて泣く泣く仕事を辞める妻は多くいても、それで仕事を辞めた夫の存在は未確認という事実。メディアにはたまに「夫の不倫を謝罪する妻」が登場するものの、「妻の不倫を謝罪する夫」の目撃談はいまだない。一方で、男が子育てすれば「イクメン」と言われ、介護をすれば「ケアメン」と名付けられ持ち上げられるのに、女が仕事して子育てして家事をしてその上介護までしても誰も名付けてもくれないし褒めてもくれないという現実がある。
 そんなふうにもやもやすることに、「女子という呪い」と名付けてみた。

 本書には、私がこれまで感じてきたジェンダーを巡るもやもやを詰め込んだ。同じもやもやを抱える女性たちも登場するが、「昭和の忘れ物」みたいな男も多く登場する。彼女の許可なく避妊をしないDV男、常に女に点数をつけないと気が済まない 上から目線のランキング男、理想の女性のタイプを堂々と「おしん」とのたまう「お母さん大好き」男。
 もちろん、男性の中にもマッチョな昭和のオッサン的価値観の男たちに違和感を持つ人も多くいる。「男のくせに」、上司の酒にとことんつきあえないのか。上司が誘ってやってるのにキャバクラや風俗に行かないとは何事か、お前は「それでも男か?」。例を出せば枚挙にいとまがない。当然、そんなオッサンは女性にもあの手この手でセクハラやパワハラをやらかしてくる。そんなオッサンが一人でも多く自分の「やらかし」に気づいてくれますように。そんな思いも詰め込んだ。

 本書は 私にとって、ジェンダーについて初めて真正面から書いたものである。な ぜ、書いてこなかったのか。それはちょっとでもそのようなことを書くと、予想を超えるバッシングが寄せられたからだ。
「他の分野ではいいこと言ってるのに途端にヒステリックになる」「被害者意識バリバリで残念すぎる」「そういうつまらないこと言う女だと思わなかった」等々。  多くは男性からのもので、そのたびに、ジェンダーについて語るハードルは、私の中でひっそりと高くなっていた。ここは地雷原なのだ。そう思い、口をつぐもうとした。  が、やっぱ無理だった。そうしてまとめたのが本書だ。ちょうどまとめている頃、「#Me Too」運動が世界を席巻し始めた。なんだ、みんなおかしいと思ってたんだ。このもやもやって、やっぱり言葉にしていいことなんだ。それで「黙れ」とか言われること自体が、そもそも卑劣なことだったんだ。

 多くの女性たちから、「自分も声を上げると決めた」などの嬉しい感想が届いている。世界中で声を上げた女性たちに最大限の敬意を払いつつ、すべての女性の連帯のための一冊になることを願っている。 (著者・雨宮処凛)