スリランカで感じた「教育」の力(7ヵ国目/世界一周)

バックパックを背負っての世界一周旅行、7ヵ国目はスリランカに来ました。世界経済フォーラム(WEF)によると、スリランカのジェンダーギャップ指数は調査対象144ヵ国のうち109位(2017年データ)。保健分野でのスコアは好成績で、堂々たる1位です。しかし、2018年現在、女性議員は全体のわずか5.8%(資料: GLOBAL NOTE 出典: 国連)と、世界的に見ても非常に低い数値。女性議員が少ない日本の13.7%(同)と比べても、さらに低いことが分かります。東京から首都のスリ・ジャヤワルダナプラ・コッテへの直行便はなく、首都から10キロ離れた旧首都であるコロンボへの直行便が週に4本あります。所要時間は9時間ほど。

朝礼が始まる前の小学校

今回私は、スリランカの日本語教師の方の家にホームステイをし、日本語教育のボランティアをしました。去年の夏休みにもボランティアをするためスリランカを訪れているので、今回が2度目の訪問です。小学校や中学校・高校に行き、折り紙などの日本の文化を教えたり、試験を控えた高校生に日本語を教えたりと、とても貴重な体験をしました。

そこで、幼稚園、小学校、中学校、高校、どの学校を見ても女性教師が圧倒的に多いことに気付きました。私が訪問した1つの学校は、12人中男性は校長先生と事務の方2人のみで、その他全員が女性教師でした。クラスを持っているのは、女性しかいません。そのことについて聞いてみると、この学校が例外的にそうなのではなく、学校の先生の割合は女性が多いのだそう。これにはとても興味を持ちました。

なんでも、スリランカでは驚くことに女性の方が優秀なのだそうです。スリランカでは「Aレベル試験」という試験に合格しなければ大学に行くことができません。その試験に合格すれば無償で大学に行くことが出来るのですが、その合格率も大学進学率も女性の方が高いのです(Aレベル試験に合格したのち、大学入学はせず、学校の斡旋のもと就労ビザを取得して先進国で働く人もいます)。

このように優秀な女性が多いスリランカですが、多くの場合、女性は結婚や出産を機に仕事を辞めなくてはなりません。しかし、学校には結婚し子供をもつ女性教師の方が多くいました。学校教師は、結婚し子供を産んだ後でも働き続けることが出来るのです。学校が13時半には終わるため、教師は早い時間に家へ帰り、夏休みなどの長期休暇は生徒だけでなく教師も休みます。つまり、教師は固定勤務時間が少なく、家事や育児など家庭の時間を十分に確保することが可能なのです。これにより女性教師と結婚したいと望んでいる男性も多く、結婚の際も教師という職業は重要な役割を果たします。よって、女性にとって学校の教師はとても人気のある職業なのです。

試験が終わった後の5年生のクラスの様子


スリランカでは1947年に無償教育制度が成立して以来、女性は教育を受けるという非常に大きな恩恵を手にしました。この制度が成立する以前、女子は学校へ行くことが困難であり、その時代と比べると飛躍的に活躍するようにもなりました。スリランカが男女平等を時代とともに実現しつつあることが分かります。世界一周旅行をしていて感じるのは、教育を受けていないことは女性の地位を低くしてしまう最も大きな要因のひとつだということ。教育を受けていない女性たちは自立できないため、社会的地位を確保することができないのです。まともな職を手にすることができず、貧困のスパイラルから抜け出せないという状況を多く目にしてきました。だからこそ、このスリランカでは教育がもたらす非常に大きな力を感じます。ジェンダー主流化が進むスリランカのこれからが楽しみです。(佐野仁美)