「ポリアモリー」という恋愛関係(33ヵ国目/世界一周)

 <ニューヨークにて>

前回の記事の際は日本にいた私ですが、12月17日に再出発をしてカナダのイエローナイフへ行くことができました。イエローナイフといえば世界的に知られるオーロラの名所で、「3日間滞在すれば95%以上の確率でオーロラを見られる」と言われています。そしてもちろんオーロラを期待していた私ですが、なんと残りの5%に入ってしまったようで、幻想的なオーロラを一度も見ることができないままカナダを出国。旅の厳しさを感じつつ、アメリカの首都ニューヨークへ向かいました。

世界経済フォーラム(WEF)によると、アメリカのジェンダーギャップ指数は調査対象144カ国のうち49位。中でも、教育分野では1位と非常に良い成績をおさめています。日本のジェンダーギャップ指数は114位なので、アメリカは男女平等が日本よりもかなり進んでいる国という印象です。東京からアメリカのニューヨークまでの距離は約10,800km。ケネディ国際空港と成田空港の直行便では約14時間かかります。

 <ドミトリーの中の様子>


今回は、ニューヨークで出会った26歳アメリカ人女性のマヤについて書きたいと思います。私はいつも格安の宿をネットで探しているのですが、殆どの場合は1部屋に2段ベッドが3つほど置かれた、所謂ドミトリーという部屋に泊まります。同室になった人たちと談笑することが多いのですが、ニューヨークのドミトリーで同室になったのがマヤでした。

そして、旅をする中で私が思うのは、恋愛話は世界共通だということ。今回もマヤと恋愛話で盛り上がりました。この話に入ると、やはりお互いの恋人の有無が話題になります。マヤに「恋人はいる?」と聞くとマヤは「ええ。いるわ。2人ね」と、衝撃的な発言を口にしました。最近、日本のマスコミでは不倫騒動や浮気を取り立てて報道しています。それらに影響されていたのか、私もマヤの言葉を聞いたとき驚きのリアクションを隠すことができませんでした。私はあたふたとして、なぜか ”Oh, great”と言っていました。そんな私を見るなりマヤはにっこり微笑んで「私はポリアモリーなの。彼らの合意を得ているわ。私は彼らふたりのことを心から愛しているのよ」と言い、私は以前聞いたことのある「ポリアモリー」という言葉を思い出しました。

ポリアモリー(polyamory)とは、デジタル大辞泉によると「 ”複数” を意味するギリシャ語のpolyと ”愛” を意味するラテン語のamorを合わせた造語。同時に複数の人と交際する恋愛関係。当事者全員が合意した、誠実で継続的な関係をいう」とされています。ポリアモリーの対義語である「モノガミー」は一人だけと性愛関係を結ぶことを意味します。ポリアモリーが浮気や不倫と異なるのは、関係性を隠さずパートナー全員が関係に合意している点と、順位付けせず1人1人を誠実に愛している点とされています。マヤの恋愛も、浮気などではなくポリアモリーとして彼ら一人一人と向き合い、恋愛関係を構築していることがわかりました。

ポリアモリーという関係から思うのは、何も1人の相手とだけ恋愛することだけが誠実な関係なのではない、ということ。まだまだ賛否両論はありますが、多様化しつつある性や個人の恋愛観を否定することはできないですし、恋愛は当事者たちの合意のもとでより良い関係が築かれていくことこそ重要です。自分がポリアモリーを選択する可能性だってあるわけです。

ポリアモリーとしての恋愛を楽しんでいるマヤのように、一人一人の恋愛観が認められそれを実践していける世の中になるには、まずは自分の思い込みを手放し、様々な恋愛や性のあり方を知ることから始まるのではないか。そんなことを考えさせられたニューヨークの夜でした。(佐野仁美)

 <ニューヨークの夜景>