竹信三恵子(たけのぶみえこ)最終講義 2019年2月2日
授業名 「現代社会と労働」「ジェンダー労働論」「貧困の社会学」「メディアから読みとく社会」「現代社会とメディア」「ジェンダーとメディアと」「インタビューの技法」「現代社会学演習」「プロゼミ」
タイトル 『和光大学での労働教育における若者の変容 新自由主義と雇用の劣化の中で』
日時 2019年2月2日(土)15:15〜16:30
場所 和光大学E101教室
退職年月日 2019年3月31日
専門分野 労働社会学、マス・メディア論、ジェンダー研究
新聞社で30年以上労働担当の記者として取材に携わり、若い方の就職の実態などについてもっと現場に即して知りたいという関心から大学へやってきたのが2011年4月でした。東日本大震災が起きた直後で、被災地の女性支援にかかわりながら不慣れな大学生活に適応する、ということで、かなりしんどい日々でした。
学生たちは、会社に入ることには一生懸命でも、働き始めた後、どのようにして身を守るのか、そのためにどのような権利があるのかについては白紙と言っていい状態でした。それは、いまの若い人たちが「恵まれている」からではありません。1970年代以降、学費は値上がりを続け、親世代の賃金も下降傾向をたどり、バイトをしないとやっていけない学生が多い中で、それにつけこんで「ブラックバイト」が横行します。そこで「過酷な働き方が当たり前」と刷り込まれます。せっかく就職しても、辞めざるを得ないような労働条件であることも少なくありませんが、非正社員が増えすぎて「とにかく正社員就職」が目的となり、その後のことなど考える余裕もありません。
「女性活躍」政策が始まっていますが、女性正社員の過労死・過労自死の報道は相次ぎ、セクハラ、マタハラも横行しています。にもかかわらず、労働は男性のもの、という無意識の刷り込みが、なお女性に行われ、働く女性の労働教育や安全ネットをこれからどう構築していくかは大きな課題になっています。
この8年は、学生たちを通じて、そんな若い人の現実を教えてもらった日々でもありました。こうした私の足取りと、労働教育の授業について語った最終講義の映像が、下記のようにユーチューブにアップされましたので、ご覧になってください。
今後は、大学生活の中で考えてきたことの総決算を、フリーのジャーナリストとして結実させていきたいと思います。
プロフィール
ジャーナリスト
1976年、朝日新聞社に入社。編集委員兼論説委員(労働担当)などを経て2011年4月から2019年3月まで和光大学現代人間学部教授。
ジェンダー差別や労働について報道を続け、「貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動」に対し2009年、貧困ジャーナリズム大賞。
著書に『しあわせに働ける社会へ』(岩波ジュニア新書)、『これを知らずに働けますか~学生と考える、労働問題ソボクな疑問30』(ちくまプリマー新書)など。