旅の終わりを目前にして思うこと(47ヵ国目/世界一周)
ブラジル、アンゴラ、南アフリカ、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、ザンビアを越えて、今回はタンザニアへ。世界でも治安の悪い「最恐都市」として知られる、ダルエスサラームに来ました。世界経済フォーラム(WEF)によると、タンザニアのジェンダーギャップ指数は調査対象144カ国のうち68位(2017年データ)。日本の114位と比べるとタンザニアの方が進んでおり、政治面でのランキングが44位と優秀です。東京からダルエスサラームまでの距離は約11300km。直行便はないため、乗り継ぎ1回の最短ルートで約20時間かかります。
南米については前回のエッセイでも書いていますが、数多くの絶景を持つパタゴニアにある、美しい氷河で知られているペリトモレノやフィッツロイ(有名アウトドアブランドであるパタゴニアのロゴにもなっている)は事前情報通り壮観でした。フィッツロイへ行くにはテントや食料などのキャンプ用品を持って5時間のトレッキングをし、さらに1時間の登山をしなければ絶景は見れません。絶景を見るのも、楽ではないということを痛感。世界最南端の街であるウシュアイアからは、家族や祖父母にこの旅で初めて手紙を送ることもでき、満足でした。
とはいえ、いよいよ私の旅も残り僅かとなりました。2月18日に出発し一時帰国を挟んだ約1年間の世界一周は3月20日で終止符がうたれます。長いようであっという間の旅でした。
やはり、海外には日本にいるだけでは考えないようなことに溢れており、自分が「女性」であることを日本にいる以上に痛感します。世界一周するにも、男性と女性では危機管理のレベルが全くと言っていいほど違います。例えば、日本人や欧米人などの男性のバックパッカーはアフリカの町並みを颯爽と歩きますが、外国人女性は日常的に現地人男性から髪の毛を触られる対象です(アフリカ人女性はストレートヘアの方が少ないため、欧米人やアジア人女性を好んで触るそう。もちろん、そんなものはやっていい理由になりません)。私も、道を歩いているときに何度か無言で髪の毛を触られて気持ち悪い思いをしたのですが、声をあげることはなく逃げていました。
しかし、あるとき私の目の前で髪の毛を触られたのち、大きな声で「エクスキューズミー!」と叫んだ欧米人女性が。その瞬間、触った男はそそくさと遠くの方へ逃げて行きました。そのとき、「ああ、強いな」と感じました。海外で女子が一人旅をしていると、当然ながら誰かに守ってもらって生きるなんてことはできません。自分の身は自分で守るしかない。そういうスキルがなければいろんな行動が制限されてしまう。日本を出てから、自分の身は自分で守れて、何かあったときに声をあげられるような、危機管理が徹底されているような、そして「ノー」と言えるような、強い女性への憧れが大きくなりました。
この1年で「なぜ、女性というだけでこのような扱いを受けるのだろう」という経験を沢山してきたからこそ思うのは、自分が女性だという事実が悪いのではなく、性別で差別する相手が悪いということ。当たり前のようですが、本当に辛いことがあったときはここを錯覚してしまいます。そういう問題や困難を解決していくために必要なのが「ジェンダー」という視点であり、個人の人生や社会の在りようをより良い方向へ進めるためのキーワードが「ジェンダー」だと思っています。私は、この考え方を通して、自分が望む理想の女性になろうと思います。(佐野仁美)