2010.04.08 Thu
タイトルにある「フィデル」とはフィデル・カストロのこと。裕福な暮らしをしていたアンナのパパとママが、突然“キョーサン主義”に目覚め、一家はリッチな暮らしからビンボー暮らしへと一変。パパはチリのアジェンデ政権のために働きはじめ、ひげ面の男の人たちが狭い家にあふれるように。ママは女の人から“チューゼツ”の話を聞くことに夢中。元の生活に戻りたい不満いっぱいのアンナは叫ぶ。「ぜんぶ、(“キョーサン主義”の)フィデルのせいなのね!!」 舞台は1970年のフランス。社会が大きく揺れ動いた時代、アンナの生活も大きな変化をむかえた。けれど、こどもにしてみれば、“ダンケツ”が必要だといわれて行ったデモ行進で警察に追われ怖い目にあうし、電気代を節約するほどお金がなくなったのに、どうして貧しい人を助けなければならないのか、納得のいかないことばかり。“キョーサン主義”も“チューゼツ”も、アンナが納得できるように大人は教えてくれないのだから。
親に振り回され、仏頂面のアンナだが、彼らはアンナに考えるべき課題を与えてもくれている。それをジュリー・ガヴラス監督は「鍵」と表現し、「教育とはいろいろな扉を開けられるように沢山の鍵を与えること」と言っている。アンナの手は、最初はママに撫でられるだけだったのに、弟をしっかり握りしめる手となり、悲しみに立ちすくむパパにそっと添えられる手と変化していく。アンナは「鍵」を受け取り、自分の意志で通っていたカソリック校を辞める。従順であることを善とする教えに対し、自由を尊重すべきだと対立したのだ。映画のラスト、初めての学校で好き勝手にみんなが遊ぶ様に呆然としている彼女に、手が差し出されるシーンが美しい。「鍵」を受け取ったアンナの手は、差し出された手によって、新しい輪と結ばれるのだ。(horry)
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