黒木雅子(くろきまさこ)最終講義 2019年7月16日 
タイトル「ジェンダーの色と宗教の交差点 日系アメリカ人キリスト教女性のサバイバル」


日時 2019年7月16日(火)
場所 京都先端科学大学、亀岡キャンパス悠心館Y31
退職年月日 2019年3月31日
専門分野 社会学、女性学、宗教研究
授業名 ジェンダー論

 最終講義では、日系アメリカ人のジェンダーと宗教に焦点をあてた研究の歩みと変遷をお話しました。私にとって研究のきっかけとなったのは、20代での日系アメリカ人運動家(研究者)との出会いです。それから40年余り、日系人女性のジェンダー・エスニシティ・宗教の交渉にたどりつきました。振り返ってみれば、これらの差異は20代からずっと私の環境にあったものです。したがって日系人女性研究は、日本でサバイバルに突き当たるなか「女性とは」「日本人とは」「宗教とは」という私自身のopen-endedの問いでもあったように思います。そして講義の最後に、抑圧の源泉が一つではないこと、さまざまな差異を単独ではなく交差させてとらえることによって、部分的同一化と連帯可能性を述べました。すでに、日本において複合的マイノリティや交差研究に注目する研究が見られます。今後、外国人とその子ども、そしてミックスレース(mixed race)」の増加が予想される日本においても、研究にとどまらず「差異の交差」視点が求められます。
 最後に、本講義の動画撮影のために、リハーサルと本番の撮影、編集を引き受けてくださった桂容子さんに、心から感謝します。

プロフィール
兵庫県神戸市生まれ、神戸女学院大学社会学科卒業、神戸YWCAを経て渡米、カリフォルニア州立大学社会学部大学院修士課程終了、神戸女学院大学女性学インスティチュートを経て再渡米、カリフォルニア太平洋神学校(Pacific School of Religion)修士課程終了、京都学園大学非常勤講師、同大学人間文化学部助教授を経て教授、2019年3月31日退職。4月1日京都先端科学大学名誉教授。

著書など
『改訂版 異文化論への招待ー <違い>とどう向き合うか』朱鷺書房 2014(1996)、 『混在するめぐみー ポストコロニアル時代の宗教とフェミニズム』川橋範子氏との共著、人文書院(2004)、 「ジェンダー・エスニシティ・宗教との交渉ー 北米アジア系女性の複合的アイデンティティ」太田好信編著 『政治的アイデンティティの人類学ー 21世紀の権力変容と民主化にむけて』昭和堂(2012)、 『国家を超えるとはー 民族・ジェンダー・宗教』李恩子氏との共編著 新幹社(2016)、 「日米の文化比較からみる日系アメリカ人の性役割」『女性学年報』7号(1986)、 「日系アメリカ人女性の自己再定義ー エスニシティ・ジェンダー・宗教の交差」『社会学評論』Vol. 50 #2(1999) など、