WANのサイトでもご協力いただいた「フリーランス・芸能関係者へのハラスメント」実態調査の結果がまとまり、9月9日、厚生労働省へ要望書とともに提出しました。これは、日本俳優連合、MICフリーランス連絡会、フリーランス協会が行った調査で、1218名の有効回答を得ました。フリーランスに特化したハラスメント調査は日本では初めてで、メディアからも大きな注目を集めました。
 ご協力に、改めて御礼申し上げます。

6割がパワハラ被害、4割がセクハラ被害の経験
 被害の内容は、「精神的攻撃(脅迫や暴言等)」「過大な要求(遂行不可能なことの強制)」「経済的な嫌がらせ(報酬を支払わなかったり値切ったりする行為、脅威)」が上位を占めました(表1)。
 セクハラでは、「性経験/性生活への質問等」が最も多かった(表2)のですが、「不必要に身体に触れられた」「性的関係を迫られた」「レイプされた」など深刻な被害もありました。
 今回の調査の特徴は、俳優ら芸能関係者の現場で多く発生しているとみられる「仕切りがないところで着替えをさせられた」「脱いだら出番が増えると言われた」などの質問項目を入れたことです(表3)。日本俳優連合の担当者は、「これらの言動は、これまでは当たり前のこととされていた。アンケートに答えることで、ハラスメントだと認識してもらえる効果があったのではないか」といいます。

被害者の約半数が「相談できなかった」
 ハラスメントの被害について誰かに相談した518人のうち、家族や友人以外の第三者に相談できたのは、被害を受けた人の38.5%にとどまりました。
 誰にも相談しなかった432人(45.5%)に「相談しなかった理由」を尋ねたところ、「人間関係や仕事に支障が出る恐れ」「仕事を失うなど不利益を被る恐れ」が上位に(表4)。
「どこに相談すればよいかわからなかった」との声もあります。
 被害の影響を尋ねた質問では、「心身に支障をきたし、通院または服薬をした」が21.6%(207人)に上ったことは衝撃でした。

13項目の要望を提出
 こうした実態を踏まえ、フリーランスへのハラスメントを防止するためにパワハラ防止法等の「指針」に盛り込んでほしい13項目の要望をまとめ、厚生労働省および同省労働政策審議会雇用環境・均等分科会(労政審)委員に提出しました。主な項目は、次のとおりです。
3)発注者企業の相談窓口でフリーランスからの相談も受けつけ、対応をおこなうこと。
5)ハラスメントに抗議したり相談したことを理由とした不利益取り扱いを禁止すること。
〔不利益取り扱いの例〕
・一方的な契約の打ち切り、契約条件変更
・仕事の発注を止める
・不利益な評価をおこなう など
7)打ち合わせなどをおこなう場所や時間についてのルールを各産業・企業で定めること。
〔例〕
・ホテルの部屋などの個室で1対1の打ち合わせをしない
・深夜にはおこなわないなど安全に配慮した時間や場所を指定する など
8)パワハラ類型に「経済的な嫌がらせ」を追加すること

 8)について、記者会見の席で、東洋大学准教授の村尾祐美子さんは「従来『契約トラブル』とみなされてきたことを、ハラスメントの文脈で捉え直せば「経済的な嫌がらせ」と位置づけられる。ILOハラスメント根絶条約でも、経済的に害を与える行為や脅威もハラスメントでありうるとしている。多くのフリーランスが経済的な嫌がらせを経験していることは、政策的取り組みの必要性を示す」とコメントしました。

労政審で「指針」の論議が始まる
 2019年5月末に、パワハラ防止法等が成立。フリーランス等雇用されていない人たちに対しては、「指針」でハラスメント防止対策を講ずることという附帯決議が付きました。9月18日より、厚労省の労政審で「指針」に盛り込む内容の議論が始まっています。アンケート回答者の切実な思いを防止対策につなげるために、引き続き運動を進めていきたいと思います。
 なお、3団体では、電子署名「フリーランスもハラスメント防止法の対象にしてください! #STOPハラスメント」を開始しました。10月18日をめどに、厚労省に届けます。引き続き、ご協力をお願いします。
https://www.change.org/stop-harassment

詳しい調査結果は以下をご参照ください。
https://blog.freelance-jp.org/20190910-5309/

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