
辻村みよ子(つじむら みよこ)最終講義
2020年1月31日
授業名 ジェンダーと法
タイトル 「憲法学とジェンダー法学の課題――50年の研究者の歩み」
日時 2020年1月31日(金)17:20~18:20
場所 明治大学駿河台田キャンパス
アカデミーコモン9階309B教室
退職年月日 2020年3月31日
専門分野 憲法、ジェンダー法
1968年に大学に入学した当時は1学年800人中女性は10人、法学部200人中2人と言う状態でした。憲法学研究者を志して大学院に進学し、フランス革命期のジャコバン憲法の人民主権論や選挙権論等の研究を続けましたが、「憲法は女性に向かない」などといわれ、大学への就職が難しい時代でした。フランス人権宣言に女性の権利が含まれてないことを主張して「女性及び女性市民の権利宣言」(1791年)を書いたオランプ・ドゥ・グージュの伝記を翻訳したり『女性と人権』という研究書を出版したのは1990年代のことです。2000年代になると欧米でもフェミニスト法学からジェンダー法学に変化し、2003年には日本でもジェンダ―法学会ができて、男性やLGBTを含めて性差の問題を研究するようになりました。21世紀COEやグローバルCOEで内外の多くの研究者と協力して「ジェンダー平等と多文化共生」の研究を進め『ジェンダー社会科学の可能性』(辻村・大沢真理編、岩波書店全4巻)などの編著書を出版し、キャサリン・マキノン教授らを招いた国際シンポジウムも開催しました。個人的にも、女性の少ない憲法学界にあって『憲法とジェンダー』(有斐閣)や『憲法と家族』(日本加除出版)などを出版して意識改革を目指しました。男女共同参画会議や日本学術会議男女共同参画分科会等でも、学術分野等の男女共同参画推進のための取組を進めましたが、日本の性別役割分業構造は「永久凍土」のように強固です。2019年のジェンダー・ギャップ指数(世界経済フォーラム、GGI)世界121位と史上最悪のレベルになり、政治分野にいたっては144位、(100点満点で)4.9点というひどい状況です。制度改革と意識改革、そしてポジティヴ・アクションを推進して、あらゆる局面でジェンダー平等のための取組を進めることが急務です。道は険しいですが、研究・教育・実務の連携やネットワークを進めることで、何とか頑張らねば、と思っています。
プロフィール
一橋大学・成城大学・パリ第二大学・東北大学をへて、2013年から明治大学法科大学院教授。ジェンダー法学会理事長、全国憲法研究会代表、国際憲法学会理事、内閣府男女共同参画会議等を歴任。
近著に『憲法改正論の焦点』『比較のなかの改憲論』『ポジティヴ・アクション』『人権をめぐる15講』『概説 ジェンダーと法(第2版)』『比較憲法(第3版)』
『憲法(第6版)』など。
最終講義に使用したレジュメは、こちらからダウンロードできます。
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