やはり、今月もコロナ関連です。

 日頃、男と女の二分法はよくないと思っているわたしですが、今回は女性、男性と単純化して述べていきたいと思います。また、新型コロナウイルス感染で引き起こされたさまざまな事象を「コロナ」の語で代表させます。論点を明確にするためと、表現を短くするためであることをご理解ください。

 さて、「コロナ」の影響の受け方について考えてみると、どうしても女性と男性、弱者―子ども・高齢者など―と青壮年の有力強者とがくっきり分かれてきていること、そしてそれが日本社会の構造的な差であることが、改めて明らかになります。

 影響の大きさ、被害の大きさ、ストレスの深刻さなどからいうと、圧倒的に女性と弱者の側がその度合いは強いです。ということで、

 まず、いちばん生活に打撃を受ける、失業者です。

 総務省の発表によると、「パートやアルバイトなど立場の弱い非正規労働者は2019万人で、子育て世代の女性を中心に前年同月比で97万人の減となり…」(毎日新聞5月30日)ということで、その97万人のうち「女性が71万人をしめた」(朝日新聞5月30日)と報道されています。実に非正規労働で失業する人の73%が女性なのです。立場の弱い子育て世代の女性が直撃を受けて、失業に追いやられていることを知ります。これは、いかに女性が日頃、不安定な働き方を余儀なくされているか、そして非常時になるといかにたやすく解雇されてしまうか、という日本社会のひずみのクローズアップされた姿です。

 失業すると、まず明日からの生活が成り立たなくなります。仕事と一緒に与えられた宿舎を退去させられることになります。また家賃が払えなくなり、住む所を失います。本当に路頭に迷ってしまいます。

 「コロナ」で保育園が休園になり、小中学校が休校になると、母親がモロに打撃を受けます。自分の仕事の維持で頭がいっぱいなところへ、子どもの面倒をみる、昼食を準備する、学校の宿題もみなければならない、となります。父親が戦力になって家事も教育も分担している家庭もないわけではありませんが、残念ながらそれは少数派、やはりそれらの負担は母親にずっとずっと重くのしかかっています。テレワークに切り替えた母親も、仕事は続けられますが、増えた家事と、家での仕事とで負担は倍増します。テレワークのできない仕事の母親は、家にいる子どもだけおいておくこともできなくて、休んだり他人に頼んだりしなければなりません。何と、子どもだけの家を狙う空き巣狙いも増えているという現実もあります!

 さらに、テレワークで家にいる夫の食事の世話という、新しい大きな負担がのしかかってきます。その上、親が在宅するようになり、子どもたちの「コロナ反抗期」という現象が広がっているとか(朝日新聞5月29日夕刊)。つまり、父親に、「今日は何してた」「勉強したの」といつも言われて、「それしかいうことないの」と中3の娘がキレてしまった、父親の説教に堪忍袋の緒が切れて高2の娘が部屋に閉じこもってしまった、などの例です。これは父親が日頃、子どもとの関係を滑らかにしてこなかったツケが回ってきたのでしょう。後の例では母親が仲介して何とか仲直りをしたそうですが、母親は子どもと父親の橋渡しの仕事もしなければならなくなります。厄介なことです。

 あげくのはてには、子どもが家にいて在宅の仕事に支障が出る、と暴力をふるう父親、それを止めようとする母親への虐待などのDV被害も増えています。被害を訴えたくても、家に加害者がいるから電話相談もできない。子どもも女性も逃げ場がなくなって、悲惨な事態を招いています。

 こうした妻や母親の被害や負担がどんどん増えてきています。

 テレワークで家にいる男性には、家にいることによる負担は生まれません。「子どもを静かにさせろ」とか、「疲れたからひといき入れよう」と言っているだけですみます。そして、昼の食事もたまには気晴らしに台所に立つことはあるかもしれませんが、主たる食事の準備者は妻か母親です。いつでしたか、ゴルフの練習場でリフレッシュする人の写真が新聞に載りました。ずらりと並んでクラブを振っているのはすべて男性でした。ストレス解消と言って練習場まで出かけられるのは男性です。その時、家にいる妻と子どもはどうやってリフレッシュすればいいのでしょう。あんがい、お父さんいなくてせいせいしてる、といないことで喜ばれているのかもしれませんけれど。

 在宅で、家事の負担が増える一方なのに、男性はそれを分担することはあまりしていないらしいことを、この写真は示していました。

 緊急事態宣言下で三密を避けろ、夜の外出はやめろと、散々言われていたときに、マンションの一室で賭けマージャンに興じていたのも4人の男性です。まず、賭博を取り締まる側の検事長が賭けマージャンをやっていた。これはどういうことですか。自己の職務に対するあまりの無責任さと、まして検察法改正案論議のただなかでの世間をみくびった傲慢さに怒り心頭、呆然自失としか言いようがありません。そして、その相手をしていたのが、現役新聞記者2人と元記者1人というのも許せません。そうした不正を検察側の人が犯していたら、真っ先に摘発するのが記者の仕事ではないですか。

 近所のデイサービスの施設のレクリエーションで、利用者さんと一緒にマージャンをしたことがあります。デイサービスに行きたがらない男性が多いけれど、マージャンや囲碁などを取り入れている施設は人気があると聞きました。童謡を歌ったり、風船遊びをしたり、折り紙をしたりという従来どおりのプログラムを提供する施設には、行きたくないのも無理はないでしょう。たしかにマージャンは、頭の体操になります。きれいにパイがそろっただけでも楽しいです。だれよりも早くテンパイしてロンと言えれば、点が安くてもうれしいです。そうした高齢者の楽しみも、三密になるから、今はできません。わずかに残された高齢者の楽しみさえ、今はできなくて、我慢しているのです。そうした中で、高級官僚と新聞記者は夜遅くまで賭けマージャンに興じていた‥‥。

 「コロナ」は、地球の自然環境の変化で生きにくくなったウイルスが、人の社会に自身の生存の場を求めて来た結果と言われています。人類は、自然を破壊して便利さと合理性の恩恵に浴してきました。女性も―男性よりは少ないけれど―その恩恵を受けて来ました。だから「コロナ」のもたらす影響に、ぐっと耐えて我慢して急場をしのいでいます。そうするしかないからです。でもその忍耐と我慢が女性や子ども、高齢者により多く、より深く求められるのは、何といっても不公平です。

 Stay homeや自粛を求めるなら、まず、男性にも有力者にも公平に求めてください。