1986年の原著初版刊行以来30年以上にわたって版を重ねてきた、全編まるごと女性をテーマにした情報地図帳の最新版が翻訳刊行されました。

アメリカのフェミニズム地理学者ジョニー・シーガーによる本書『女性の世界地図』は、政治、経済(仕事)、結婚、出産、スポーツ、教育、衛生、犯罪、差別など多岐にわたるテーマについて、客観的な統計データに基づき世界の女性たちの状況をカラフルに地図化しています。グローバル化の進展やインターネットの発達などの今日的テーマも示され、洗練された親しみやすいデザインでありながら、「世界に女性差別が存在すること」を説得力のある形で表現する手法として地図の威力を大いに発揮しています。

WANのサイトをご覧の皆様は、様々な分野のジェンダー格差に関する日本の「後進国」ぶりを身にしみてよくご存知のはず。実際に日本の遅れた状況を見せつけられ暗い気持ちになるページも少なくありません。しかし著者は「女性の世界では『先進国』はほとんど存在しない」と述べています。

確かに、あらゆる分野においてジェンダー格差が縮小している国は数えるほどしかありません。一般にいう「先進国」「発展途上国」といった線引きが、「女性の世界」については当てはまらないことにも気付かされます。

訳者あとがきにもあるように、本書は不公正と闘うフェミニストのための「知的武器」でもあり、年齢や前提知識の有無を問わず女性の状況について知ることができる社会変革の入り口でもあります。多くの皆様に活用いただけることを願っています。(担当編集者)

■内容紹介■
はじめに
Part 1:世界の女性たち
Part 2:女は女の場所に置いておく
Part 3:出産にまつわる権利
Part 4:身体のポリティクス
Part 5:健康・衛生
Part 6:仕事
Part 7:教育とつながり
Part 8:財産と貧困
Part 9:権力

◆書誌データ◆
書名 :女性の世界地図―女たちの経験・現在地・これから
原題 :The Women’s Atlas
著者 :ジョニー・シーガー(Joni Seager)
訳者 :中澤高志、大城直樹、荒又美陽、中川秀一、三浦尚子
出版社:明石書店
刊行日:2020/10/25
定価 :3,520円(税込)